チャンドラ・ボースとイスラム王朝の遺産が残るインドのデリー
日本が支援したチャンドラ・ボースのインド国民軍
2021年2月の軍事クーデター発生後、今なお武力衝突が続くミャンマーですが、私はかつてミャンマーのヤンゴンにホームステイをしていたことがあって、インパール作戦での「チェロ・デリー(進めデリーへ)」の話を聴く機会がありました。
それは「日本の人々がチャンドラ・ボースの活躍を覚えているなら、ミャンマー人もインド人も英国植民地支配に抵抗するため、ボースのインド国民軍を支援したのが日本だったことを思い出すべきだ」という話でした。
残念ながら、日本ではマハトマ・ガンジーのことは語られてもチャンドラ・ボースのことを知らない人が多いようです。しかし、東京都杉並区にある蓮光寺には、チャンドラ・ボースの遺骨が埋葬されており、ネルー首相をはじめ主だったインド人が参詣されると聞いています。
また、本格インドカレーとして知られる新宿中村屋のカレーを作った、ラース・ビハーリー・ボースもインドの独立運動家です。 そこで今回はガンジー、ネルーと並んでチャンドラ・ボースの肖像画が掲げられたインド国会議事堂のあるデリーの世界遺産を紹介します。
デリー イスラム王朝の3つの世界遺産
この地で最も象徴的な世界遺産はやはり「クトゥブ・ミナール」でしょう。これは12世紀末に奴隷王朝の始祖アイバクが、北インドを制圧した後、「神の影を東西世界に投影する」目的で建造を命じたとされ、イスラム勢力拡大のシンボルでした。ミナールとはミナレットのことで、本来は1日5回の礼拝を呼びかけるための塔です。
72.5mもの高さは、今なおインドで最も高い石塔で、5層の塔の壁にはコーランの文章を図案化した彫刻模様が施されており、当時のイスラム教の権力の強さや威厳を感じさせます。また、赤砂岩で作られているため、夕陽を浴びるととても美しく輝きます。
そして塔の下にはインドで最初に作られたイスラム教モスク、クワットゥル・イスラーム・モスクがありますが、その回廊には偶像禁止のイスラム教では珍しい女神の姿が描かれています。そして、中庭には4世紀に作られたとされる1600年間錆びずに残っている高純度鉄で作られた「錆びない鉄柱」があり、表面にはサンスクリット語の碑文が刻まれています。
また、「フマーユーン廟」は、ムガール帝国第2代皇帝フマユーンの墓廟ですが、イスラムのペルシャ文化とインドの伝統ある様式が融合されたムガール様式という華麗な建築の先駆けとなり、有名なタージ・マハルのモデルとなりました。
この、フマーユーン廟は、広大な正方形の庭園の中央に位置しており、緑の芝生の庭は道路や水路で田の字型に区切られ「四分庭園(チャハルバーグ)」 と呼ばれています。非常に秩序的で美しく、塀に囲まれた水と木々の日陰が豊富にある庭園は、イスラム教徒にとって天上の楽園の再現でした。
タージ・マハルは皇帝シャー・ジャハンが愛妃のために造った霊廟ですが、こちらはフマーユーン帝の妃ハージ・ベグムが亡き皇帝の思い出のためにヤムナー河の近くに建てさせた廟です。
シャー・ジャハンと言えば、アグラからデリーに遷都する際に築いた城塞「レッド・フォート」も世界遺産に登録されています。宮殿の跡地で、赤砂岩を積み上げて造った要塞のため、別名「ラール(赤い)キラー(城)」と呼ばれており、中でも西側の正門ラホール門と南側のデリー門は素晴らしい建造物です。
しかしながら、18世紀後半、インドはイギリスによって統治されるようになってしまい、レッド・フォートはイギリスの軍用施設となったため、敷地内には数多くのコロニアル建築が建てられました。
イギリスから奪還した後も近年までインド軍の軍用施設として利用され続けていたので、かつての栄光の面影は城壁や門など、わずかしか残っていませんが、見学可能な宮廷エリアには、シャー・ジャハン彼の妻ムムターズ・マハルの暮らした宮殿をはじめ、かつては数々の宝石で飾られた「孔雀の玉座」を擁する謁見の間など、ムガール帝国時代の面影が残っています。
私はこのレッド・フォートを築いた皇帝もさることながら、フマユーン廟を建てさせた妃の愛の深さに感銘を受けます。そして今日のインドの繁栄を考えれば、1945年の日本敗戦後も英国統治からの独立闘争を主導した2人のボースの強い意思を継承する人々こそがインドの真の世界遺産だと思います。
祝!日本の縄文文化「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産登録
「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されたことを記念して、私はみちのくを旅した芭蕉の研究本『松尾芭蕉の旅に学ぶ』と共に『縄文人からのメッセージ』というタイトルで縄文文化を語り、平成芭蕉の『令和の旅指南』シリーズ(Kindle電子本)として出版しました。人生100歳時代を楽しく旅するために縄文人の精神世界に触れていただければ幸いです。
また、日本人の心に灯をつける『日本遺産の教科書』、長生きして人生を楽しむための指南書『人生は旅行が9割』、感情の老化を防ぐ私の旅日記である『生まれ変わりの一人旅』とともにご一読下さい。
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⑤『日本遺産の教科書 令和の旅指南』: 日本人の心に灯をつける 日本遺産ストーリーの旅
★関連記事:平成芭蕉の旅のアドバイス「旅して幸せになる~令和の旅」
私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。