日本刀の切れ味の秘密を探る「日本刀と刀匠、藤安将平」
「日本刀の名刀」は日本人の心のよりどころ
すなわち、古代文明は鉄器、すなわち鉄の武器を持った人たちによって支配されてきたのです。
そして日本においては「たたら」から玉鋼を作り、この玉鋼を原料として武器でありながら心のよりどころでもあった日本刀が作られてきました。
私は三重テレビ放送の特別番組「宝刀(たからのかたな)~日本人の魂と技~」の第3話「平成の刀鍛冶」を見て、刀鍛冶に関心を抱きました。
刀と言えば、三種の神器の一つ「草薙の剣」や日本刀の中の名刀「正宗」、妖刀「村正」などを思い浮かべますが、刀には様々な顔があります。
すなわち、刀は日本人の精神性を象徴する奉納品、武将や剣豪が使った武器、また鑑賞の対象として日本人の人生観や美意識に影響を与えてきました。
現代の刀匠藤安将平氏とその師匠
藤安刀匠は人間国宝・宮入行平刀匠のもとに弟子入りして修行されました。
正確に言えば、師匠となる宮入刀匠の奥さんの「家事」手伝いをしながら刀鍛冶の技術を伝授されたそうです。すなわち、師匠の奥さんに支援されて今日があるとのことです。
現在、国宝として指定を受けている名刀は約120点ばかりあり、それらは平安末期から鎌倉、南北朝時代にかけて作られたものです。
このことから「鎌倉期を頂点として刀工の技術がさがり、名刀が出来なくなった」と言われています。
そこで藤安刀匠は「古名刀とまではいかなくとも、古刀のような条件を備えた刀を作りたい」と鍛錬されてこられました。
初めて訪れたにもかかわらず、実物の刀に触れさせていただく機会をいただきました。
そして刀身を光にかざすと美しい刀紋に身が引き締まる思いでした。
私は切る武器をここまで美しい芸術品に仕上げる日本人の魂に感動するとともに、日本刀の本質を後世に伝えるために、日本刀についてもっと学びたいと思いました。
刀は離れて見るものではなく、手に取ってはじめて畏敬の対象となります。
日本刀の切れ味の秘密は「たたら吹き」
貴重なお話をお伺いした後は、鍛刀場だけでなく、原料の玉鋼を作る炉のたたら場にも案内していただき、日本刀の製造過程と共に日本刀の切れ味の秘密についてもお伺いしました。
日本刀を造るには砂鉄を原料にして和鋼や玉鋼と呼ばれる鋼作りから始まりますが、これはたたら吹きという日本伝統の技術により、不純物の少ない高純度の鋼です。
そしてこの鋼を平たく伸ばし、地金づくりをし、下鍛えを済ませた心金(しんかね)、棟金(むねかね)、刃金(はのかね)、側金(がわがね)という4種の鋼を組み合わせて製造するのが日本刀の特徴です。
そして丹念な焼き入れによってマンテンサイトという硬い組織が生まれ、これこそが日本刀の切れ味の秘密です。
福島県立博物館の特別展「美しき刀たち」と藤安刀匠の教え
やはり、日本刀は用と美を備えた世界に比類のない鉄の芸術品です。
すなわち、日本刀は畏敬の対象ともなり得るほど純化され完成されたものだと思います。
よって、その制作に携わる刀匠は、精神と技を研ぎ澄まし、知力と命の限りを尽くして仕事場で戦っているようにもみえ、日本刀の本質を正しく後世に伝えるには、今、生きている我々が、日本刀に学び、日本の歴史も正しく理解すべきだと感じました。
その日本刀の伝統を継承する藤安将平刀匠は、師匠の奥さんに応援されて今日があるそうですが、本日、継承する技と心について熱く語っていただきましたので、私、平成芭蕉も、日本刀文化を守るために活動されている刀匠をはじめとする方々を、微力ながら精一杯応援させていただきたいと思いました。
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