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平成芭蕉の旅語録〜「天空の城」月山富田城とアテネのアクロポリス

「天空の城」月山富田城とアテネのアクロポリスとの共通点

安来市観光協会主催「ウィズ・アフターコロナの観光動向セミナー」の翌日は、出雲観光タクシー運転手さんの旅程管理実地研修に講師として同行させていただき、尼子氏の栄光を支えた月山富田城(がっさんとだじょう)に登ってきました。

史跡月山富田城の案内

頂上まで登るのは2018年の山城サミット安来大会でこの地を訪れて以来です。日頃お世話になっている小和田哲男先生の基調講演の後に登ったのですが、2016年に大規模な伐採が行われたため、山麓からの視界が広がっていたのが印象的でした。

月山富田城は「天空の城」とも呼ばれ、難攻不落を誇った尼子氏の居城でしたが、最終的に毛利氏によって滅ぼされ、城も毛利領となりました。1591年(天正19年)には吉川広家が入城し、近世城郭に改修しましたが、関ケ原の戦いの結果、吉川広家は岩国へ転封となります。そして、代わって堀尾氏が城主となるも1611年(慶長16年)に堀尾忠晴松江城へ移ると月山富田城は廃城となったのです。

山中御殿から見た「七曲り」

そのため、整備前の月山は樹木に覆われて、今日のような七曲りや石垣の遺構は見ることが出来ませんでした。今日、安来市観光ボランティアガイドの脇本さんの案内で、整備された広大な山中御殿に立ち、堀尾氏時代に築かれた石垣や「七曲り」眺めていると、私には何となくギリシャのアクロポリスの丘に来ているように感じました。

なぜなら、私は松江ゆかりの小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)のファンで、彼の「いかなる土地にあっても人間は根底において同一である」という思想に共感し、八雲の出身地(ギリシャ領レフカダ島)のあるギリシャにはたびたび訪れていたからです。

松江の「小泉八雲記念館」

アテネのアクロポリスと言えば、古代ギリシャにおいてポリスの中核となった岩山で、岩の丘の周囲は城壁で囲まれ,その中には神殿や公共建築物があり、市政にかかわる重要な祭儀が行なわれただけでなく、緊急時には籠城する要塞でもあったのです。

月山富田城は標高約190mの山頂に,大国主命(おおくにのぬしのみこと)を祀る『勝日高守(かつひたかもり)神社』が鎮座していますが、アテネのアクロポリスも150mの丘の上に主神アテーナ女神を祀るパルテノン神殿があるのです。

山頂の『勝日高守(かつひたかもり)神社』

すなわち、私にとって出雲神話の国津神である大国主命は、ギリシャ神話におけるアテネの守護神、アテーナ女神を連想させるのです。実際、アテーナ女神と海神ポセイドンとの争いでは、ポセイドンが馬を人間に与えたのに対し、アテーナはオリーブの木を作り出して人間に与えたと言われています。

ギリシャの要塞アクロポリスの丘

これは、「たたら製鉄」に必要な森林資源をこの地にもたらしたことに繋がる気がします。

難攻不落を誇った月山富田城の遺構

アクロポリスも「高い丘の上の都市」というだけあって、坂を上りますが、三方は崖で囲まれおり、丘の上に通じる道は西側のみです。一方、月山富田城は急な山の斜面に囲まれていますが、進入路は3か所あります。しかしいずれもが山腹部の山中御殿を通っており、そこから山頂部の本丸を目指すには「七曲り」と呼ばれる一本道を通らざるを得ない作りになっています。

花ノ壇から眺めた月山富田城

「七曲り」を登りきるとまず目に入るのが三の丸の石垣で、二段に連なった石垣は野面積みで築かれています。ところどころ欠けているのは松江城の築城の際に破却された名残と言われています。

三の丸の野面積み石垣

三の丸を過ぎると二の丸、本丸と続きますが、二の丸と本丸の間に築かれた深い堀切は最後の防御と考えられますが、山城ファンにはたまらない遺構です。

二の丸から広い本丸へ

頂上から下を眺めると山麓部にある数々の郭(くるわ)を眺めることができ、月山富田城がかなり大きな城であったことが理解できます。

山中御殿から花ノ壇千畳平(せんじょうなり)に降りてくると、太鼓壇曲輪(たいこのだんくるわ)に至りますが、ここに有名な山中鹿介幸盛(しかのすけゆきいもり)の銅像が立っています。

尼子氏再興を祈願した山中鹿介像

尼子氏再興を悲願とした鹿介が三日月に「我に七難八苦を与えたまえ」と祈った様子が伺えます。ニッカウイスキーの紋章はこの山中鹿介愛用の兜をデザインしたものですが、伊丹で酒造業を始めた鴻池財閥の始祖、山中幸元(通称新六)は鹿介の長男と言われています。

月山富田城の山頂からの眺め

総じてこの月山富田城は、どの時代(尼子時代、毛利時代、堀尾時代)にどこまで拡張したのかは不明瞭ですが、山陰地方の名城であったことは間違いありません。

今回、ガイド役を務めていただいた脇本さんは月山富田城情報局よりユーチューブで情報発信をされており、これを見れば山城マニアになることができます。

お世話になったガイドの脇本さん

私は名城スタンプを集めるだけでなく、城から歴史を読み解く楽しみを味わってもらいたいと思っていますが、今回の旅程管理研修に参加された出雲観光タクシーの方々には私のこの思いが伝わったような気がします。

出雲観光タクシーの皆さんと研修

 

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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って日本遺産を旅しています。

平成芭蕉の旅語録

平成芭蕉は「検索すればわかる情報」より「五感を揺さぶる情報」を提供します。旅とは日常から離れ、いつもと違う風、光、臭いなど五感を通じて自分を見つめ直す機会です。そしていつもと違う人に会い、いつもと違う食事をとることで、考え方や感じ方が変わります。すなわち、いい旅をすると人も変わり、生き方も変わり、人生も変わるのです。

「令和の旅」へ挑む平成芭蕉

*「平成芭蕉の旅物語」サイトマップ参照

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