航空機と車の時代を見越した計画都市「ブラジリア」
1987年に世界文化遺産に登録されたブラジリア
ブラジル中部の高原地帯に建設された未来都市のブラジリアは、何もない高原地帯に1から人工的に作られた、航空機と車の時代を見越した計画都市です。世界遺産に登録された都市と言えば、ローマのように歴史があり、伝統的な街並みを持つ旧市街をイメージしますが、1987年に世界文化遺産に登録されたブラジリアは建設から40年未満という近代的な都市です。
ブラジルでは、ポルトガルの植民地から独立した1822年以来、ポルトガル支配の象徴である旧首都リオ・デ・ジャネイロへの反発もあり、早くからブラジリアという新首都建設が提言されていました。ブラジルはその歴史的背景により、多くの民族から構成されており、リオ・デ・ジャネイロはポルトガルの影響をとても強く受けていたのです。
そこでブラジリアへの首都移転の最大の目的は、「ブラジルのアイデンティティを構築する」 ことにありました。しかし、実際に新首都建設が始まったのは、1954年に誕生したジュセリーノ・クビチェク大統領が、内陸部と沿岸部の経済的格差是正や失業率の改善などを目指し、ブラジリア遷都の計画とその設計をブラジル建設界の重鎮、オスカー・ニーマイヤーに一任して、フランス生まれの建築家ルシオ・コスタの発案を採用してからです。
クビチェク大統領は極めてカリスマ性の強い人で、どんな人でも魅了することができたという伝説があり、「古代エジプトの君主であるファラオの生まれ変わりだ、ブラジリアは古代エジプトの都市アケナトンの生まれ変わりだ」と語られていました。ブラジリア観光のハイライトの1つであるパラノア湖は、ジュセリーノクビチェク大統領がブラジリアの開業時に造った人工湖です。
一方、建築家ルシオ・コスタが意図した計画都市は、「航空機と車の時代の首都」で、上空から見ると飛行機の形をしており、そのデザインはplano piloto「パイロットプラン」と呼ばれ、首都ブラジリアが新しい未来に向けて羽ばたくことをイメージしたと言われています。
都市は十字型に交差した2つの巨大な軸をもつ大胆な構想に基づいて計画され、大きな飛行機の 胴体の軸は、東西方向に走る延長9.75kmのモニュメンタル大通りであり、翼の軸は、南北方向に延びる延長14.3kmのエイショ大通りと呼ばれています。
モダニズム建築の父「オスカー・ニーマイヤー」の建造物
「計画都市」と聞くと、見るべき観光名所はないように思われますが、このブラジリア市内にはブラジルのモダニズム建築の父と呼ばれたオスカー・ニーマイヤー設計のユニークな建造物が多く存在します。その代表は、飛行機の「胴体部」にある、ユニークな曲線が美しい大聖堂「カテドラル・メトロポリターナ」ですが、この大聖堂はブラジリアの顔であり、中に入ると青いステンドグラスに光が差し込んで、とても幻想的な雰囲気で心が洗われる気がします。
また、国の主要機関のある「機首」のエリアには、モダンな連邦直轄区立法会議所や最高裁判所があり、裁判所の前には目隠しをした女性の像が立っていますが、これは目隠し裁判の像と呼ばれ、「身分や階級などによらず公正に判断する」ということを表しています。
しかし、ブラジリアの注目すべき点は、これらの建造物自体ではなく、設計者ルシオ・コスタの都市計画そのものが法律で守られていることです。例えば、日本では考えられないことですが、1970年に完成した大聖堂は、1960年、建設途中の未完成の状態で文化財に指定されています。私は計画都市ブラジリアが、完成から30年も経ずして世界遺産に登録されたのは、このように文化財を大切にする背景があったからだと思います。
そしてブラジリアでの私のお勧めは、平和の神殿あるいは輝ける魂のピラミッドとも呼ばれる「善意の神殿(TBV)」で、この神殿は極めて美しく、世界教会運動の巡礼地になっています。その七面ピラミッド型の建物の頂点には、世界最大の水晶の単結晶がはめ込まれていますが、水晶は完全なる世界教会運動、神の統合的出現を象徴しています。
この神殿は、民族や哲学、宗教と政治の信条、無神論者と物質主義者をすべて含めた、地上界及び天上界のあらゆる者が制限を受けることなく親睦を深め、世界教会運動を振興することを理想としており、文化、芸術、生態学の教訓に基づいて、訪問者は反省の瞬間を体験できるのです。
ブラジリアではこの「善意の神殿」のように、様々な宗教の活動があり、あらゆる面で自由な生き方ができることが魅力です。すなわち、この都市には「個人に圧倒的な自由を与える」という側面があり、地球上のあらゆる地域の人々が、「どんなアイデンティティでも持つことができる」という究極の自由さがあります。
祝!日本の縄文文化「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産登録
「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されたことを記念して、私はみちのくを旅した芭蕉の研究本『松尾芭蕉の旅に学ぶ』と共に『縄文人からのメッセージ』というタイトルで縄文文化を語り、平成芭蕉の『令和の旅指南』シリーズ(Kindle電子本)として出版しました。人生100歳時代を楽しく旅するために縄文人の精神世界に触れていただければ幸いです。
また、日本人の心に灯をつける『日本遺産の教科書』、長生きして人生を楽しむための指南書『人生は旅行が9割』、感情の老化を防ぐ私の旅日記である『生まれ変わりの一人旅』とともにご一読下さい。
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③『松尾芭蕉の旅に学ぶ 令和の旅指南Ⅲ』:芭蕉に学ぶテーマ旅 「奥の深い細道」の旅
④『生まれ変わりの一人旅 令和の旅指南Ⅳ』: 感動を味わう一人旅のススメ
⑤『日本遺産の教科書 令和の旅指南』: 日本人の心に灯をつける 日本遺産ストーリーの旅
★関連記事:平成芭蕉の旅のアドバイス「旅して幸せになる~令和の旅」
私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。