南米で人気の世界遺産 空中都市「マチュ・ピチュ遺跡」
ペルー南部のアンデス山脈にある「マチュ・ピチュ」は、標高2,400mの尾根に15世紀半ばに築かれた、先住民のケチュア語で「老いた峰」という意味を持つインカ帝国の都市遺跡です。マチュ・ピチュには計画的な都市設計が見られますが、灌漑施設も整えられ、棚田では農業も行われており、また、周辺にはアンデスイワドリなどが生息する自然環境から、複合遺産として登録されています。
今でこそ世界的に有名になったマチュ・ピチュ遺跡ですが、この遺跡のふもとにあるマチュ・ピチュ村に画期的な「ホテル・ノウチ」を建て、村の発展に尽くした日本人の存在はあまり知られていません。
今日、インカ帝国の古代都市クスコから約80㎞下ったところに位置しているマチュ・ピチュまで、鉄道で簡単に行けるのも、その鉄道敷設に尽力された日本人の野内与吉氏のおかげです。
ペルーの世界遺産 空中都市「マチュ・ピチュ遺跡」と野内与吉
インカ帝国とインカ道
最近は東海道や中山道といった旧街道を歩く旅が人気ですが、これらの街道は江戸幕府によってその体制を維持する目的で整備されました。
この日本の街道と似たものとしては、南アメリカ西部のアンデス山脈に沿うように南北約4000kmにわたる長大な領土を支配したインカ帝国のインカ道があります。
このインカ道も日本の街道に似て「タンプ」と呼ばれる宿場が設けられており、一里塚ではありませんが約3kmごとに小屋が建てられ、「チャスキ」と呼ばれる飛脚も待機していました。
インカ帝国には文字はありませんでしたが、その統治政策は日本の参勤交代とは違って非常に合理的で、各都市ごとに人口、産業などの情報を「キープ」と呼ばれる結縄(縄の結び目を使った伝達手段)に記録させ、チャスキ(飛脚)を介してそれらの情報を皇帝に伝達させていました。
また、このインカ帝国は首都クスコに残る堅牢な石積みの壁に見みられるように高度な文明を持っており、まさしく黄金の帝国でしたが、16世紀にピサロ率いるスペイン人によって滅亡に追い込まれ、徹底的に破壊されました。
「失われた都市」マチュ・ピチュ遺跡
そして帝国滅亡後、インカの皇族たちは財宝と共にビルカバンバへ逃れ、スペイン人に抵抗を続けたと伝えられています。
今回はこの伝説上の黄金郷ビルカバンバを探し求めていたハイラム・ビンガムが発見した「失われた都市」マチュ・ピチュ遺跡をご紹介します。
マチュピチュはクスコからウルバンバ川に沿って約114kmの奥深いアンデス山中にあり、南側に連なる山々には尾根に沿うように険しいインカ道が続いています。周囲はジャングルに覆われ、麓からはその姿は見えず、空からしか存在を確認できないことから「空中都市」と呼ばれています。
自然石の上に建てられた石積みの見事な「太陽の神殿」やマチュピチュ最高点に立つ「太陽をつなぎとめる場所」を意味する一枚岩のインティワタナ(日時計)、コンドルの石のある神殿など、太陽神への宗教儀式に用いられたと考えられる多くの遺構が残るもマチュピチュは謎が多く、まさしくインカの歴史は推理です。
コンドルの神殿では「コンドルは飛んでいく」のフォルクローレを連想しますが、コンドルこそはインカ時代には太陽の使者として宗教上も重要な役割を担っていました。
しかし、この空中都市マチュピチュにも驚異のインカ道があったのを見るにつけ、高度な文明を支えたものは、やはり300年続いた日本の江戸時代の街道と同様、インカ道と呼ばれる“道”ではなかったかと思います。
野内与吉とマチュピチュ遺跡
今でこそ世界的に有名になったマチュピチュ遺跡ですが、この遺跡のふもとにあるマチュピチュ村に画期的な「ホテル・ノウチ」を建て、村の発展に尽くした日本人の存在はあまり知られていません。
福島県出身の野内与吉氏は1981年から1983年までマチュ・ピチュ村の村長を務め、何もない村に水力発電を作って電気をもたらしたり、3階建ての「ホテル・ノウチ」を建てて観光事業を提唱し、村の発展に生涯をささげた日本人にとって誇りとすべき偉人です。
今日、鉄道でクスコから簡単に世界遺産のマチュピチュまで行けるのも、その鉄道敷設に尽力された野内氏のおかげです。
マチュピチュ遺跡を世界遺産にしたのは、野内与吉(野内セサル良郎)氏の観光事業に対する先見の明があってこそだと思います。
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
世界遺産とは地球の成り立ちと人類の歴史によって生み出された全人類が共有すべき宝物で、その内容によって①文化遺産②自然遺産③複合遺産に分類されます。この「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。
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