あわら温泉「清風荘」で「令和と万葉集特別講演」
今回はクラブツーリズムの「旅の友」配送スタッフの集会「エコースタッフ総会」に「令和と万葉集特別講演」の講師として招かれ、あわら温泉「清風荘」に連泊しました。
来る時は、「エコースタッフの集い」“あわら温泉「清風荘」でご湯っくり 魅惑の万葉ロマンと北陸グルメ2日間”バスツアーに同乗させていただき、「水の都」福井の名勝、養浩館(ようこうかん)庭園にも立ち寄りました。
この庭園はかつて御泉水(おせんすい)屋敷と呼ばれ、福井藩主松平家の別邸として、藩主一族の迎賓館として利用されていましたが、明治17(1884)年、松平春嶽によって「養浩館」と命名され、今日に至っています。
これは中国の孟子の言葉「浩然の気を養う」すなわち「大らかな心持ちを育む」という意味があります。
あわら温泉の開湯は明治16年(1883年)ですが、当時は周りの風景が殺風景であったため、各旅館は競うように京都から庭園造りの職人を呼び寄せて、宿の庭園美を競うようになり、庭の個性やその美しさに見合う露天風呂などを整備して観光客誘致に努めたと言われています。
あわら温泉と利き酒師芦原温泉女将による純米吟醸「女将」
その甲斐あって、「芦原温泉」は『関西の奥座敷』として、また永平寺の精進落としの湯としても発展し、落ち着きある温泉街が出来たのです。
そして2004年3月、開湯120年を迎えた温泉の街「芦原町」は、蓮如の里と呼ばれる「金津町」と合併し、「あわら市」となりました。
今回、お世話になった「清風荘」はその名の通り、「清らかな風が招く、風の楽園」のようなおもてなしの心溢れる宿で、特に天然石とヒノキを使った「木もれ陽の湯」の露天風呂は、清らかで爽やかな風を感じることのできる温泉で、疲れを癒す温泉浴には最適です。
また、「清風荘」女将の伊藤さんの話では、このあわら温泉をアピールする目的で、平成25年、あわら温泉の女将13人全員が利き酒師の資格を取得し、良質の酒造好適米「山田錦」の栽培から携わって、利き酒師あわら温泉の女将による「女将」という名のお酒を造ったとのことです。
これは「和食 日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録され、日本酒の需要増加が見込まれたことも考慮されたのかもしれません。
越前の万葉ゆかりの地「味真野苑」
エコースタッフ総会での私の講演は新元号「令和」の典拠となった万葉集の講座でしたが、福井県における万葉集ゆかりの「味真野苑」をご紹介しました。
味真野苑内には「比翼の丘」と呼ばれる丘があり、平城の都からこの地に流された中臣宅守(なかとみのやかもり)と都で宅守を思う狭野弟上娘子(さののおとがみのおとめ)の悲しい恋の歌の舞台として知られています。
『中臣宅守(なかとみのやかもり)歌碑』
「塵泥(ちりひじ)の数にもあらぬ我故(われゆえ)に 思ひわぶらむ妹(いも)がかなしさ」
『狭野弟上娘子(さののおとがみのおとめ)歌碑』
「君が行(ゆ)く道の長手を繰(く)り 畳(たた)ね焼き滅ぼさむ天(あめ)の火もがも」
この二人の歌碑の立つ「比翼の丘」の名称は、仲の良い夫婦の例えである「比翼の鳥」からきていますが、この鳥は、地上ではそれぞれに歩くも、空を飛ぶ時はペアになって助け合わなければならない伝説上の鳥です。
これは、中国唐代の詩人白居易(白楽天)の長編叙事詩「長恨歌(ちょうごんか)」の中の有名な一節で、安禄山の乱が起きて都落ちする玄宗皇帝が最愛の楊貴妃に語ったとされる「天にあっては比翼の鳥となり、地にあっては連理の枝とならん(天上では二羽一体で飛ぶ比翼の鳥に、地上では二本の枝がくっついた連理の枝となろう)。」に由来します。
国の天然記念物「東尋坊」と「神の島」雄島
講演は「清風荘」で3日間、毎日ありましたが、せっかく越前まで来ているので、私は講演前の昼食時に東尋坊に行って越前ガニのコース料理を食べてきました。
東尋坊は波の浸食によってできた断崖絶壁が続く景勝地で、自殺の名所としても有名ですが、「輝石安山岩の柱状節理」という、地質学的にも珍しい奇岩は、国の天然記念物に指定されています。
また、東尋坊の近くには太古からの原生林が残り、「神の島」として崇められる雄島もありますが、この島は越前海岸では最も大きい島です。
東尋坊からの帰りにはあわら湯のまち駅前の「芦湯」に立ち寄りましたが、ここにはあわら温泉のルーツとも言える、田んぼの用水路で使う田舟の形をした「舟湯」もありました。
また、旅館への帰路の福井銀行脇には、全国を温泉巡りして、芦原温泉では雪景色を詠った与謝野晶子の歌碑もありました。
「越の国 あはらの湯場の雪にさす いみじく清きあけぼのの色」
残念ながら、今回はこのあわら温泉で雪景色は見ることはできませんでしたが、これは与謝野鉄幹との結婚のために家を捨て、11人もの子供を育て上げた与謝野晶子の熱き情熱が雪を融かしたのかもしれません。
日本の縄文文化「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産!
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って日本遺産を旅しています。
平成芭蕉は「検索すればわかる情報」より「五感を揺さぶる情報」を提供します。旅とは日常から離れ、いつもと違う風、光、臭いなど五感を通じて自分を見つめ直す機会です。そしていつもと違う人に会い、いつもと違う食事をとることで、考え方や感じ方が変わります。すなわち、いい旅をすると人も変わり、生き方も変わり、人生も変わるのです。