私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って令和時代を旅しています。

平成芭蕉のテーマ旅行
「香り(香料)」が促した大航海の旅
「臭い」と「香り」
「匂い」と似た言葉には「臭い」と「香り」がありますが、「香り」には悪臭の意味はなく、「花の匂い」や「香水の匂い」など好ましく感じられるもの、趣があるものを対象としています。
そしてこの「香り」と旅の関係を考えたとき、すぐに連想されるのは各種の香料を求めて新大陸を目指した大航海時代でしょう。
これは「匂い」の旅というよりは「香り」が促した旅で、具体的には香料(スパイス)を求めた命がけの船旅でした。
すなわち、当時のヨーロッパではオスマントルコによってアジアからの貿易ルートが遮断され、食肉保存等に必要不可欠な香辛料が手に入らなくなっていたのです。
そこで新たなインド航路を開拓すべく、危険を犯して大西洋に船出したのです。
しかし、この大航海時代が今でいう海外旅行の始まりであり、人類の旅に対する意欲を掻き立てたことは間違いありません。
「他火」から土地の「匂い」と「香り」を感じる旅
「旅」が冒険の度合いを薄めてレジャーとなった今日の「旅行」では、この「匂い」や「香り」を意識することが少なくなりましたが、日本の旅館に宿泊すれば、部屋に染み付いた囲炉裏の煮たり焼いたりしたあとの醤油の残り香が旅情をそそります。
旅の語源は「他火」とも言われており、これは旅先での囲炉裏の火を囲んだ食事を意味しています。
例えば昔の温泉旅情を感じさせてくれる奥飛騨温泉郷は、日本最古の生物化石が発見されており、日本人のルーツとも考えれらていますが、その奥飛騨の福地温泉旅館に宿泊すると、ふだんの暮らしでは感じられない「匂い」や土地の「香り」を感じることができます。
改元の歳に訪れたい「飛騨の位山」
ちなみに来年は改元という記念すべき年ですが、天皇即位の際に使用される「笏」は、この飛騨にある「位山」のイチイの木から献上されます。これは神武天皇が即位された際、飛騨の位山の先祖の霊に報告され、「位山」のイチイ(一位)の木の板を「位板(辞令)」として授けられたという伝承(口碑)に基づく習わしです。
季節の「匂い」と花の「香り」を味わう旅
しかし、季節の「匂い」と花の「香り」を味わうとすれば、熱海の「アカオハーブ&ローズガーデン」がおすすめです。
名勝「錦ケ浦」の地形を生かし、海を借景とした雄大な景色の中、世界中から集められたバラやハーブの庭園では、花の香りだけではなく、季節の匂いや潮風の匂いも堪能できます。
そして「匂い」こそは旅の隠れた主役であることに気がつくことでしょう。
<具体的な旅先>
奥飛騨温泉郷、福地温泉…高層の建物がなく夜には昔ながらの秘湯情緒があふれる山里の素朴な温泉街で、村上天皇が療養に訪れたことから「天皇泉」とも呼ばれている。
アカオハーブ&ローズガーデン…熱海にあるバラとハーブに囲まれた個性あふれる12の庭園が点在し、四季を通じて花の香りだけでなく季節の匂いも堪能できます。
*平成芭蕉のテーマ旅行「匂いの旅」は旅行読売2019年3月号に掲載されました

旅行読売 こんな旅がしたい「匂いの旅」
★平成曽良の旅のアドバイス「旅して幸せになる~令和の旅」
by 【平成芭蕉こと黒田尚嗣】
- SmaSurf Quick Search