島根県安来の人魚姫像と「はがねの街」散策
安来市観光協会での観光動向セミナー
GoToトラベルキャンペーンもしばらく休止状態ですが、問題はキャンペーンに左右されない復興策です。そこで、私は2020年、島根県安来市で「ウィズ・アフターコロナの観光動向セミナー」と題して島根県安来市で講演を行ってまいりました。
内容は地元の観光産業が独自の利益を継続的に生み出し、次に投資できるシステム「自立的次世代型観光振興」の提案です。一度限りの集約型観光旅行から、オフ期にも歴史や文化をテーマとした旅行のリピーター客を増やすリカーリング(循環)型観光旅行への転換です。私は各地で観光業界の意識改革と「観光客が来るのは当たり前ではなく、今後は地元側でも受け入れ態勢を整え、努力しなければならない」と主張してきましたが、今回は加えて「繋ぐ育てる」をテーマとした現地案内人の育成についても熱く語りました。
しかし、無秩序に観光客を増やすのではなく、インフラ等を考慮し、どのくらいの観光客受け入れが可能かを見極め、受け入れの上限を決め、さらに目標を明確にした上で、それをどのように将来にわたって維持するかの方針と手段を考える提案でした。
朝日新聞の記事では「コロナ以降の観光を考える勉強会」として紹介されていましたが、まず、やるべきことは、現状の危機を正しく認識し、デジタル化とグローバル化に向けて観光業の意識改革が必要です。そしてポスト・コロナの旅行は同じ場所にもう一度来たくなるような気付きがあり、同時に知的欲求をそそる「ストーリー型テーマ旅行」ではないかと思います。
講演終了後は、安来市内のレトロな街並みや話題の列車「銀河」を見学し、また月山富田城(がっさんとだじょう)に登り、奥出雲のたたら風土記の里も巡ってきました。
安来と言えば、「アラエッサッサァー」の掛け声で始まる安来節のどじょうすくいや横山大観など日本有数のコレクションで知られる足立美術館が有名ですが、鉄の流通拠点としても栄えた場所で、当時の賑わいは「割烹山常楼」やそば「志ばらく」などのレトロな建物から連想できます。
山常楼は国の有形文化財に登録されており、凝った造りと七十七畳の大広間を持つ料亭です。また、「志ばらく」は土蔵造りの民家で2階の座敷部屋には安来生まれの陶芸家、河井寛次郎さんの作品など貴重な骨董品が展示されています。
今なお独特のレトロな雰囲気を伝える「はがねの街」安来市は、「安来千軒 名の出たところ 社日桜に十神山」という、安来節の一節に謳われ、たたら製鉄の港町として発展してきたのです。
日本が世界に誇る「たたら製鉄」の歴史を伝える和鋼博物館前のSL機関車もその名残で、安来港に注ぐ木戸川に架かる橋には引き込み線跡も残っています。
安来の人魚姫「語臣猪麻呂(かたりのおみいまろ)の毘売(ひめ)像」
しかし、今回の安来訪問で印象に残ったのは、安来のシンボル十神山(とかみやま)と「港の公園」との中間地点にあるコペンハーゲンの人魚姫像に似たモニュメントでした。
コペンハーゲンの人魚姫は王立劇場のプリマドンナがモデルですが、安来港の女性像は「語臣猪麻呂(かたりのおみいまろ)の毘売(ひめ)像」と呼ばれ、『出雲風土記』に娘をワニ(サメ)に殺された語臣猪麻呂(かたりのおみいまろ)がワニ(サメ)を退治した伝説が記されおり、鮫に殺された姫がモデルです。
また、今日まで伝わる「月の輪神事」は、安来郷の長であった語臣猪麻呂のこのワニ(サメ)退治の故事に因んだもので、安来駅南の丘にある前方後円墳は彼の娘を埋葬した墓とも言われています。
アンデルセンの人魚姫像で知られるデンマークには「居心地が良い空間」を意味する「ヒュッゲ(HYGGE)」という言葉があります。これはデンマーク人が大切にしている時間の過ごし方や心の持ち方を表す言葉です。
「語臣猪麻呂(かたりのおみいまろ)の毘売(ひめ)像」の立つ安来港の「安来」という地も、スサノオによって「安来く(やすけく)地」と命名されており、私はデンマークの「ヒュッゲ」に通じるものを感じました。
かつてひと時の安らぎを求めて上陸した船乗りたちの気分が今なお味わえる街です。
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平成芭蕉は「検索すればわかる情報」より「五感を揺さぶる情報」を提供します。旅とは日常から離れ、いつもと違う風、光、臭いなど五感を通じて自分を見つめ直す機会です。そしていつもと違う人に会い、いつもと違う食事をとることで、考え方や感じ方が変わります。すなわち、いい旅をすると人も変わり、生き方も変わり、人生も変わるのです。