世界的に有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの世界遺産 『最後の晩餐』
レオナルド・ダ・ヴィンチの名作『最後の晩餐』は、もちろんミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会で本物を鑑賞するのが一番ですが、イタリアに行かなくても徳島県鳴門市の大塚国際美術館で修復前と修復後の絵をじっくりと鑑賞することができます。
イタリアの世界遺産『最後の晩餐』で有名なミラノの教会
大塚国際美術館で修復前後の『最後の晩餐』を鑑賞
私は毎月、旅の文化カレッジで海外旅行参加者特典の「目からウロコのヨーロッパ歴史講座」を担当していますが、最近はキリスト教絵画に関する質問を受ける機会が増えました。
そこで、私はレオナルド・ダ・ヴィンチをはじめとする著名な画家の西洋絵画をしっかりと鑑賞する目的で徳島県鳴門市にある大塚国際美術館に行ってきました。
この美術館は世界中の至宝の名画1000余点をオリジナルと同じ大きさに複製した「陶版名画美術館」です。
今回の私の目的はレオナルド・ダ・ヴィンチの有名な『モナ・リザ』ではなく、同じ彼の作品でも今では見られない修復前の『最後の晩餐』でした。
イエスによる衝撃の告白により、動揺する弟子たちに自らの肉と血としてパンと葡萄酒を与える緊迫のドラマをとらえた大壁画です。
サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会の壁画『最後の晩餐』
この絵画は、彼のパトロンであったミラノのスフォルツァ公の依頼で1498年に完成させた作品で、現在は「レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』があるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会とドミニコ会修道院」として世界遺産に登録されています。
15世紀半ばに建造されたゴシック様式のドミニコ会修道院は、ブラマンテによってルネサンス様式のクーポラと後陣が増築されており、レオナルド・ダ・ヴィンチ唯一の壁画作品は、当時、修道院の食堂だった部屋の壁面にフレスコ画ではなく、テンペラ画の技法で描かれました。
フレスコ画は漆喰を塗ってから乾ききるまでに絵を仕上げる手法で、重ね塗りや描き直しは基本的にできません。レオナルドはこの作業時間の制約を嫌い、完全に乾いた漆喰の上に薄い膜を作った上で、卵・ニカワ・植物性油等を溶剤として顔料を溶き、白黒で陰影を描いた後に色を重ね塗りして写実的に描きました。
しかし、このテンペラ画は温度や湿度の変化に弱く、食堂という環境から激しい浸食と損傷が進み、そのため、16世紀から19世紀にかけてこの損傷や剥離部分について複数回の修復や書き足しが行われました。また、第二次世界大戦で修道院の一部が破壊された影響もあり、「最後の晩餐」も損傷を受け、20世紀後半にはレオナルド自身の絵がどの程度残っているのかわからなくなってしまいました。
ピニン・ブランビッラによる完璧な修復で蘇った『最後の晩餐』
そこで、1977年から20年以上の歳月をかけて大規模な修復作業が行われましたが、この大事業は修復家ピニン・ブランビッラが一人で行い、レオナルドのオリジナルの線と色彩を見事によみがえらせました。
その結果、壁のタペストリーが花柄であり、キリストの口は閉じていないことや、テーブルには魚の切り身が並んでおり、裏切者のユダの顔だけが陰になっていることなどがはっきりと分かるようになりました。
これは、修復家であるピニン・ブランビッラが従来の一時的な補修ではなく、本当の「修復」というプロの仕事をこなしてくれたおかげかと思います。
ミラノでの見学は予約制でしかも15分足らずしか鑑賞できないので、ルネサンス期の天才レオナルドとプロの修復家ブランビッラの偉業を理解するためには、事前に大塚国際美術館で修復前と修復後の作品を見比べてから本物を見に行かれることをお勧めします。
レオナルド・ダ・ヴィンチの斬新な構図と天才的な人物描写
じっくりと鑑賞すればこの絵の斬新な構図とレオナルド・ダ・ヴィンチの天才的な人物描写が見てとれます。
すなわち、イエスが裏切り者の存在を告げたその瞬間、ある者は立ち上がり、自分ではないと訴える者、顔を見合わせて議論を始める者など、まるで演劇のクライマックスを見ているかのようです。
ここには同じ表情や動きをしている者は一人もいないのです。
従来、裏切り者のユダはテーブルの反対側に描かれていましたが、この絵ではペテロとヨハネというイエスにとって重要な使徒と一緒に描かれているので、私には何とも言えない緊張感を感じるのです。
祝!日本の縄文文化「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産登録
「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されたことを記念して、私はみちのくを旅した芭蕉の研究本『松尾芭蕉の旅に学ぶ』と共に『縄文人からのメッセージ』というタイトルで縄文文化を語り、平成芭蕉の『令和の旅指南』シリーズ(Kindle電子本)として出版しました。人生100歳時代を楽しく旅するために縄文人の精神世界に触れていただければ幸いです。
また、日本人の心に灯をつける『日本遺産の教科書』、長生きして人生を楽しむための指南書『人生は旅行が9割』、感情の老化を防ぐ私の旅日記である『生まれ変わりの一人旅』とともにご一読下さい。
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④『生まれ変わりの一人旅 令和の旅指南Ⅳ』: 感動を味わう一人旅のススメ
⑤『日本遺産の教科書 令和の旅指南』: 日本人の心に灯をつける 日本遺産ストーリーの旅
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
世界遺産とは地球の成り立ちと人類の歴史によって生み出された全人類が共有すべき宝物で、その内容によって①文化遺産②自然遺産③複合遺産に分類されます。この「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。
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