月山を水源とする立谷沢川の『黙而雄』と「疎水百選」の北楯大堰 | 【黒田尚嗣】芭蕉さんの旅講座

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月山を水源とする立谷沢川の『黙而雄』と「疎水百選」の北楯大堰

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山形県を流れる全国屈指の清流「立谷沢川の砂防堰堤」

東の四万十川、立谷沢川の龍神様

月山を水源とする立谷沢川は、出羽の豊富な湧水を集めながら最上川に合流し、「東の四万十川」と呼ばれる全国有数の清流です。
しかし、かつては豪雨が降る度に暴れ川となり、洪水の被害を起こしていたため、昔の人は龍神・水神様の石碑を建立し、祈りを込めて氾濫を鎮めてもらっていました。
また、月山の奥深くには『龍神様』がいらっしゃるという伝説もあり、立谷沢川流域の集落には必ず石碑が祀られていました。
そして今も集落に残る石碑の脇には、かつての災害をわすれないようにと、鉢子地区の龍神供養塔脇にあるようなおしゃれな龍神銅板が設けられています。

立谷沢川の砂防堰堤と『黙而雄』の碑

また立谷沢川上流は、地質がもろく、大規模な土砂崩壊が発生していたので、今日では龍神・水神様を参拝する代わりに六淵ダムや瀬場ダムのような砂防堰堤が地元民の家や命を守っており、『現代の龍神石碑』ということで壁面に龍が描かれています。
私は国土交通省の新庄河川事務所の方から、この立谷沢川流域の歴史や史跡、そして砂防事業との関わり等について詳しい説明を受けました。
その中で瀬場堰堤工事に尽力された当時の工務課長、倉上靖氏の『黙而雄(もくしてゆう)』という言葉を刻んだ石碑が印象に残りました。
最近の異常気象で洪水や土砂災害がニュースで報じられるケースが増えてきましたが、この『黙而雄』の碑は長きにわたる「土砂災害との闘いの歴史」を風化させずに後世に伝え、さらには地域の魅力再発見にもつながるモニュメントかと思います。
『黙而雄』とは、「与えられた過酷な仕事を黙々と果たす」という意味で、目立たない山間部で苦労の多い現場作業員の心意気を今に伝えているのです。

「亀ノ尾」発祥の米どころ庄内平野の礎、「北楯大堰」

また、立谷沢川の水は水路によって庄内平野に流れ、田を潤しています。
この庄内町の水路「北楯大堰」は、江戸時代初頭、この地区の狩川城主となった北館利長(きただてとしなが)が、立谷沢川から水を引く大工事を行って完成させた庄内地方の堰の元祖で、この水路のおかげで庄内平野が米どころとなったのです。
すなわち、この庄内町はおいしいお米のルーツ「亀ノ尾」発祥の地でもあるのです。
現在、立谷沢川は平成の「名水百選」に、北館大堰は「疏水百選」に選ばれていますが、いずれも地元民の難工事への挑戦によって得られたものです。
私は常々、「出来るからやる」のではなく、「まずは黙ってやると出来るようになる」と自分に言い聞かせてきましたが、瀬場堰堤のそばに立つ『黙而雄』の碑は、その心意気を再認識させてくれました。

by 【平成芭蕉こと黒田尚嗣】

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