令和の「平成芭蕉」

令和の「平成芭蕉」

平成芭蕉の日本遺産

平成芭蕉の日本遺産 笠岡市・丸亀市「悠久の時が流れる石の島」

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日本遺産の地を旅する~心に残る風景に出会える笠岡諸島

新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期になっていた備讃諸島の日本遺産モニターツアーに同行し、岡山県笠岡市笠岡諸島の北木島と白石島、香川県丸亀市に属する塩飽(しわく)諸島の本島と広島を巡ってきました。

日本遺産の笠島諸島

日本遺産の笠島諸島

笠岡市は岡山県の西南部に位置する瀬戸内海に面した港町で、世界でひとつしかないカブトガニ博物館でも有名ですが、今回はフェリーで北木島や白石島に渡り、日本の建築文化を支えた瀬戸内の銘石「北木石」の産地を訪ねました。

笠岡諸島を巡るフェリー

北木石は大坂城の石垣だけでなく、靖国神社の石鳥居日本銀行本店本館など、日本を代表する建造物に使われています。

昭和の面影を残す「光劇場」

昭和の面影を残す「光劇場」

私はまず、北木島の「光劇場」と呼ばれる昭和20年代から42年まで営業していた旧映画館で北木島の石文化に関する映像を鑑賞しましたが、島で受け継がれる作業歌である「北木島石切唄」が紹介されており、この島はまさに石とともに生きてきたことが理解できました。

光劇場での「北木島石切唄」紹介映像

北木島の小金風呂(こかなぶろ)にある丁場と呼ばれる石切り場では、明治25年以来、延々と花崗岩「北木島」の石切りが行われており、今では高さ100mの断崖で、底は海面下にあり、神秘的な水たまりとなっていました。

〔北木島の「石切りの渓谷(たに)展望台」からの眺め〕

現在は鶴田石材(株)が管理しており、今まで一般公開されていませんでしたが、日本遺産認定を機に、毎日12~13時の昼休みの時間限定で見学できるようになりました。設けられた「石切りの渓谷(たに)展望台」からは、天に向かってそそり立つ絶壁の壮大な景観を堪能することができます。

ツアーで訪れた「石切りの渓谷展望台」

この北木島の石を全国に知らしめたのは「石の聖」と呼ばれた畑中平之丞という人で、花崗岩を掘り出す方法を考えただけでなく、売り先を見つけ、また、石を全国に売るためには、郵便局がなければならないと考え、明治31年に北木島郵便局をつくり、初代局長にもなりました。

「光劇場」の映像で紹介された「石の聖」

そしてこの北木島の石材業をさらに発展させたのは、電力会社と交渉し、電力で動く削岩機を使って石を掘るようにした馬越儀三郎氏で、今回は姻戚にあたる馬越さんに北木島を案内していただきました。

馬越義三郎の旧宅

今も残るその馬越義三郎の旧宅の近くには、かつて採石していた丁場(石切り場)跡に水がたまり、湖のようになった場所があり、現地では「北木の桂林」と呼ばれていました。

北木島の丁場湖「木島の桂林」

また、「北木のベニス」と呼ばれる千の浜の護岸景観も素晴らしく、採石で余った端材を利用して護岸が築かれており、矢穴の残る石が巧みに組み合わされていました。

千の浜の護岸景観

北木のベニスを見学した後は、「K's LABO(ケーズラボ)」と呼ばれる北木島の石の歴史や文化、魅力を紹介する複合施設のストーンミュージアムで「檸檬メシ弁当」の昼食を取り、食後は北木島産の石を使った「石の灯り」作り体験をしました。

北木島の岩と複合施設「K’sLABO」

北木島の豊浦港から白石島へは笠岡フェリーの定期船で渡りました。白石島は「白石」の名の通り、巨岩や奇岩が露出しており、「びくに岩」など、信仰の対象となって神が祀られた巨石もありました。

笠岡諸島の白石島

私は白石島の案内人である天野さんの案内で、弘法大師が開山したと伝わる弘法山開龍寺を参拝しましたが、その大師堂は巨石の下に建てられており、弘法大師が修行した場所とされ、荘厳な雰囲気を感じました。

弘法山開龍寺

天野さんによれば、この開龍寺は源平水島合戦の死者の霊を弔う為に建立されましたが、弘法大師が唐からの帰途、白石島に立ち寄り、巨岩の下で37日間の修行を行い、ここを霊地と定めたのが始まりだそうです。

開龍寺門前での天野さん

塩飽諸島は古くから海運と縁が深く、「塩飽水軍」「塩飽廻船」の名前で知られています。村上水軍は武器を有していましたが、塩飽水軍は武器を持たずとも信長・秀吉・家康などの天下人から信頼される海の強者でした。

木烏(きがらす)神社の鳥居と三宅さん

塩飽諸島へは丸亀港からフェリーで渡りましたが、最初に訪れた本島(ほんじま)では、塩飽大工顕彰会の三宅邦夫代表の案内で、特徴ある石造りの木烏(きがらす)神社鳥居、塩飽水軍を統治した塩飽衆の代表者である「年寄」の墓や、政治の中心であった「塩飽勤番所跡」、細川家の石切り丁場である「塩飽本島高無坊山石切丁場」を見学しました。

塩飽勤番所跡

本島では江戸から戦前の名残をとどめる笠島集落も散策しましたが、笠島は城根とも呼ばれるとおり、塩飽水軍の根拠地で、集落の東にある東山には土塁、堀切に加えて見張り台跡も残っていました。

笠島集落の町屋形式の建物

笠島集落では高度な技術を要する矢来(やらい)と呼ばれる石垣と壁に瓦を貼った「なまこ壁」の建物やマッチョ通りと呼ばれる通りに面して出格子や虫籠(むしこ)窓をあしらった町家が立ち並び、国指定の重要伝統的建造物群保存地区になっています。

笠島集落の入り口

中でも塩飽大工が最後に作った家とされる築100年の「吉田邸」は、12mの節無し杉の丸太を使うなど、細部に塩飽大工の技が垣間見られるぜいたくな造りで、本島のかつての繁栄をしのぶことができました。

笠島集落の吉田邸

持ち主である吉田稔さんの案内で邸内を見学しましたが、有田焼と思われる染付の陶磁器のトイレと床の間に飾られた伊藤若冲の墨画は必見です。双幅の掛け軸の一つには雌鳥(めんどり)がひなを育てている様子、もう一つには雄鳥(おんどり)がその姿を見守っているようにまるで生きているかのように描かれています。

吉田邸の「伊藤若冲の墨画」

庭に目をやると、竜が天に昇るような形をした松の木が、さながら1枚の絵のように植えられていました。欄間には刀のつばや古銭がはめ込まれていて、光に透けるととても美しく塩飽大工の匠の技が光っています。

吉田邸の庭の松

本島の泊港から広島の江の浦港へはチャーター船で渡り、広島では島旅農園「ほとり」の唐崎さんに石の里資料館、尾上邸を案内していただきました。

本島と広島を巡ったチャーター船

石の里資料館は旧広島西小学校の一部を利用し、広島産出の花崗岩「青木石」の歴史や石切の道具、島の生活道具などを展示しており、石の島の姿を垣間見ることができました。

広島の「石の里資料館」

この広島にある尾上邸には、島で採掘された「青木石」をまるで城のように高く積み上げた石垣があり、総ケヤキ造りの家屋とともに往時をしのばせてくれました。尾上家は江戸時代に廻船問屋として栄え、手積みされた4.5mもの石垣は見ごたえがあり、令和3年7月からは宿泊をはじめ、交流や体験ができる施設となっています。

城のような石垣に建つ尾上邸

また、港への海岸道からは、沖に浮かぶ岩礁(波節岩)の上に設置された「はぶし灯台」が見えましたが、これは花崗岩の切石を積み上げてつくられています。

波節岩灯標(はぶし灯台)

塩飽の人々は海運業で生計を立ててきましたが、今日残る魅力的な景観はその商いで得た富が生んだもので、島のいたるところで石との縁(えにし)を感じることができました。

塩飽水軍の拠点「笠島集落」

今回の旅では、この石と海と人が創った伝統と文化は今も島の人々の暮らしに息づいていることが改めて実感できました。江戸時代に幕を開けた採石業で、人は石を動かし、石を刻み、石を用いて暮らしをたててきました。しかし、石は人の前に立ちはだかり、人の心に恐れや悲しみも刻み、その結果、人の心を動かして精神文化とも結合して信仰の対象になったのでしょう。

高無坊山の石に刻まれた刻印

古代より西日本における海上交通の大動脈であった瀬戸内海の備讃諸島は、大小無数の島々が典型的な多島海を形成し、島には平地が少なく、山肌から海岸まで至る所に花崗岩の巨石がむき出しとなっています。

備讃諸島を形成する花崗岩の露出

これら備讃諸島に見られる石は、大切な祈りの対象でもありますが、私には石自体にも意志や魂が込められているように感じました。

本島の「年寄の墓」

知ってる!?悠久の時が流れる石の島~海を越え、日本の礎を築いたせとうち備讃諸島

日本遺産ストーリー〔香川県:丸亀市、小豆島町、土庄町、岡山県:笠岡市〕

瀬戸内備讃諸島の花崗岩と石切り技術は、長きにわたり日本の建築文化を支えてきた。

日本の近代化を象徴する日本銀行本店本館などの西洋建築、また古くは近世城郭の代表である大坂城の石垣など、日本のランドマークとなる建造物が、ここから切り出された石で築かれている。

島々には、400年にわたって巨石を切り、加工し、海を通じて運び、石と共に生きてきた人たちの希有な産業文化が息づいている。

世紀を越えて石を切り出した丁場(ちょうば)は、独特の壮観な景観を形成し、船を操り巨石を運んだ民は、富と迷路のような集落を遺した。

今なお、石にまつわる信仰や生活文化、芸能が継承されている。

塩飽本当高無坊山石切場跡

日本の縄文文化「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産!

「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されることを記念して、私はみちのくを旅した芭蕉の研究本『松尾芭蕉の旅に学ぶ』と共に『縄文人からのメッセージ』というタイトルで縄文文化を語り、平成芭蕉の『令和の旅指南』シリーズ(Kindle電子本)として出版しました。人生100歳時代を楽しく旅するために縄文人の精神世界に触れていただければ幸いです。日本人の心に灯をつける『日本遺産の教科書』、長生きして人生を楽しむための指南書『人生は旅行が9割』とともにご一読下さい。

★平成芭蕉ブックス
 ①『日本遺産の教科書 令和の旅指南』: 日本人の心に灯をつける 日本遺産ストーリーの旅
 ②『人生は旅行が9割 令和の旅指南Ⅰ』: 長生きして人生を楽しむために 旅行の質が人生を決める
 『縄文人からのメッセージ 令和の旅指南Ⅱ』: 縄文人の精神世界に触れる 日本遺産と世界遺産の旅 
 ④『松尾芭蕉の旅に学ぶ 令和の旅指南Ⅲ』:芭蕉に学ぶテーマ旅 「奥の深い細道」の旅 

平成芭蕉「令和の旅指南」シリーズ

★関連記事:平成芭蕉の旅のアドバイス「旅して幸せになる~令和の旅」

私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って日本遺産を旅しています。

平成芭蕉の日本遺産

平成芭蕉の日本遺産

この「平成芭蕉の日本遺産」は、単なる日本遺産登録地の紹介や旅情報の提供ではなく、「平成芭蕉」を自称する私が、実際に現地を訪れて、地元の人と交流し、私が感じたことや認定されたストーリー対する私自身の所見を述べた記録です。

「令和の旅」へ挑む平成芭蕉

*「平成芭蕉の旅物語」サイトマップ参照

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