令和の「平成芭蕉」

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平成芭蕉の世界遺産

平成芭蕉の世界遺産~とんがり屋根と白壁の「アルベロベッロのトゥルッリ」

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南イタリアの世界遺産 とんがり屋根と白壁の「アルベロベッロのトゥルッリ」

平成芭蕉の「世界遺産への旅」 平成芭蕉の「世界遺産への旅」

おもちゃ箱の中から出てきたような可愛らしい街並み

世界遺産の宝庫と呼ばれるイタリアですが、南イタリアではおとぎの国に迷い込んだような錯覚に陥るアルベロベッロはお勧めで、アイア・ピッコラモンティの両地区にはこのユニークな家屋が集中しており、「アルベロベッロのトゥルッリ」として世界遺産に登録されています。

アルベロベッロのトゥルッリ

中世の末期まではこの付近には樫の森が広がっていて、生きているおとぎ話の町という趣だったそうで、アルベロベッロとは「美しい木」という意味です。

南イタリアのプーリア州、オリーブの産地として知られる農村地帯では、白壁に円錐形の帽子のような石積み屋根を載せた「トゥルッロ」(複数形が「トゥルッリ」)と呼ばれる家屋を見ることができます。

これは先史時代から受け継がれてきた石灰岩の切り石を丁寧に積み上げて仕上げる工法で、トゥルッリの白壁の中は二重になっており、壁の間には小石が入れられていました。

トゥルッリの屋根

この地域は水場から遠かったので、屋根に降った雨をこの壁を通してろ過し、地下の貯水槽に溜めていたのです。また、この二重の壁は乾燥した外の大気を遮断し、暑い夏も寒い冬も室内の温度を一定に保つ効果もありました。

しかし、最大の特徴は簡単に解体できるように、薄く切り出した石灰石を積み上げただけの屋根で、表面には白い漆喰でハートや鳥などの魔術的な模様が描かれ、てっぺんには飾りの石が置かれています。

アルベロベッロ観光のスタートは、町の守護聖人である双子の医者“コズマ”と“ダミアーノ”が奉られた「聖メディチ聖堂」からです。この聖堂の裏手にあるのが、1700年代前半に建てられた「トゥルッロ・ソヴラーノ」で、当時は、家主である裕福な家柄のカタルド神父の宮廷と呼ばれていました。

聖メディチ聖堂

とんがり屋根の伝統家屋“トゥルッリ”の集合体では、珍しい2階建て構造で一番高い屋根は、14メートルもの高さを誇り、現在、博物館として当時の暮らしぶりを一般公開していますが、内部には、山賊から身を守るための工夫が随所にありました。

トゥルッリとアウベロベッロの歴史

アルベロベッロにトゥルッリの住居が作られるようになったのは17世紀初頭、当時の領主であったナポリの名門貴族アックアヴィーヴァ家ジャンジローラモ2世が、この地に街づくりを始めたことがきっかけです。

住居や商店をたくさん作って住民が増えれば、その税金で自分も潤うというわけですが、当時は領主が住居の数に応じてナポリ王国に納税する義務があったため、税金逃れのために、簡単に解体できるトゥルッリの住居を義務化したのです。

アルベロベッロの町並み

18世紀に入り、住民の暴動によってジャンジローラモ2世の暴政が幕を閉じましたが、アルベロベッロではその勝利を記念し、それまで禁止されていた石灰とモルタルを使った、トゥルッリではない最初の建物を、アックアヴィーヴァ家の宮殿の前に建てました。

この建物は暴動に参加した町長のフランシスコ・ダモーレの名をとって、「カーサ・ダモーレ(ダモーレの家)」と名付けられましたが、アルベロベッロの住民にとっては、領主の悪政から町が開放された象徴ともいえる建物で、2階のバルコニーの上には、1797年の年号とともに「王の決定によりこの家は石灰で最初に建てられた」と記されています。

カーサ・ダモーレ

カーサ・ダモーレからプレビシート広場へ進むと、アルベロベッロで一番見晴らしの良い場所「サンタルチア展望台」に至りますが、展望台横の階段を下りると、目抜き通りのマルテロッタ広場に出ます。

アルベロベッロの地形はすり鉢状になっていて、真ん中の低いところがマルテロッタという細長い広場で、この広場の南斜面に盛り上がるようにトゥルッリが密集している所が、観光の中心「モンティ(坂道の多い場所という意味)地区」です。

私はこのモンティ地区の大通りモンテ・サン・ミケーレ(大天使ミカエルの坂)に面して、この街で唯一の日本人女性が経営する「陽子の店」に立ち寄り、トゥルッリの内部を見せてもらいました。

陽子さんの店

そして、ランチタイムにはこの土産物屋やレストランが所狭しと並ぶ「アルベロベッロ銀座」のレストランで、グラノアルソ(焦がした小麦)で作られたパスタ「オテッキエッテ」を食べましたが、伝統の青菜とアンチョビの香ばしさが最高でした。

ランチを終えたら、屋根に可愛いシンボルが描かれた5つのトゥルッリが並ぶ「モンテ・ペルティカ通り」を訪ねましたが、この模様には宗教や魔術的な意味が込められているそうです。

魔術的な文様が描かれたトゥルッリの屋根

さらに通りを進むと、丘の上にアントニオ・リッポリス司祭の功績を称えた「聖アントニオ教会」が建っており、丘の下には「双子のトゥルッリ」と呼ばれ、2軒のトゥルッリが合体したようなトゥルッロ・シアメーゼがあります。

観光客が多い賑やかなモンティ地区とは対照的に、静かな時間が流れる「アイア・ピッコラ地区」のドゥーカ・デッリ・アブルッツィ通りにある展望台からは、トゥルッリの間からのぞくモンティ地区の眺めを堪能することができます。

聖アントニオ教会

私のお勧めは、5月27日広場に建つ「郷土博物館(Territory Museum)」で、昔の農具や地元の石でできた生活道具、トゥルッリ建設の作業道具が展示されており、石とともに生きてきたアルベロベッロ住民の生活を垣間見ることができます。

この資料館は15軒のトゥルッリの集合体で、当時の家主の名から“ペッツォッラ邸”と呼ばれています。

アルベロベッロの郷土博物館

可愛い家トゥルッリが立ち並ぶアイア・ピッコラ地区を歩いていると、おとぎの国に迷いこんだような錯覚に陥りますが、つらかった町の歴史を思えば、感慨深いものを感じました。なぜなら、つらかった町の歴史がこの可愛い景観を残してくれたと考えられるからです。

祝!日本の縄文文化「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産登録

「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されたことを記念して、私はみちのくを旅した芭蕉の研究本『松尾芭蕉の旅に学ぶ』と共に『縄文人からのメッセージ』というタイトルで縄文文化を語り、平成芭蕉の『令和の旅指南』シリーズ(Kindle電子本)として出版しました。人生100歳時代を楽しく旅するために縄文人の精神世界に触れていただければ幸いです。

また、日本人の心に灯をつける『日本遺産の教科書』、長生きして人生を楽しむための指南書『人生は旅行が9割』、感情の老化を防ぐ私の旅日記である『生まれ変わりの一人旅』とともにご一読下さい。

★平成芭蕉ブックス
 ①『人生は旅行が9割 令和の旅指南Ⅰ』: 長生きして人生を楽しむために 旅行の質が人生を決める
 『縄文人からのメッセージ 令和の旅指南Ⅱ』: 縄文人の精神世界に触れる 日本遺産と世界遺産の旅
 『松尾芭蕉の旅に学ぶ 令和の旅指南Ⅲ』:芭蕉に学ぶテーマ旅 「奥の深い細道」の旅
 ④『生まれ変わりの一人旅 令和の旅指南Ⅳ』: 感動を味わう一人旅のススメ
 ⑤『日本遺産の教科書 令和の旅指南』: 日本人の心に灯をつける 日本遺産ストーリーの旅

平成芭蕉「令和の旅指南」シリーズ

参考記事:世界遺産の旅における「へー、そうだったの」

★関連記事:平成芭蕉の旅のアドバイス「旅して幸せになる~令和の旅」

私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています

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「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。

「令和の旅」へ挑む平成芭蕉

 

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