令和の「平成芭蕉」

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平成芭蕉の日本遺産

平成芭蕉の日本遺産 牛久市~ワイン文化に貢献した「シャトーカミヤ」

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日本初の本格的ワイン醸造場「牛久シャトー」

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シャトーカミヤ旧醸造場施設事務室

茨城県牛久市と言えば牛久大仏が有名で、また、白菜、ピーマン、レンコンなどの野菜収穫量も全国的にトップレベルで農業が盛んな地域でもあります。

しかし、この牛久市には明治の文明開化時に国産ブドウを原料とする日本ワインを醸造し、日本のワイン文化に貢献した「シャトーカミヤ」があり、2020年、山梨県甲州市とともに「日本ワイン140年史~国産ブドウで醸造する和文化の結晶~」というストーリーが日本遺産に認定されました。

日本遺産認定された牛久市のワイン文化

浅草にある神谷バーの創設者である神谷傳兵衛が、1903年に牛久の地に日本初の本格的なワイン醸造場を造ったのです。

ボルドーに派遣された神谷傳蔵の功績

神谷傳兵衛が特に洋酒に興味を持つきっかけは、横浜の外国人居留地でフランス人が経営するフレッレ商会という洋酒醸造所で働いていた17歳の時、原因不明の激しい腹痛に襲われて「自然回復しか手段はない」状況で、飲んだ葡萄酒でした。フレッレ商会の経営者が持参してくれた葡萄酒を飲んだ傳兵衛は、気分が爽やかになり、やがて病気はすっかり治ってしまったのです。

神谷傳兵衛はこの時、葡萄酒が持つ滋養効果を知って、「日本人の誰もが飲めるような葡萄酒の国内醸造ができないものか」と考えるようになり、ここに、傳兵衛の運命は大きく変わったのです。

フランス留学中の傳蔵の写真

神谷傳兵衛は、婿養子として迎えた小林傳蔵をフランス最大のワイン産地、ボルドー地区にあるデュボワ商会カルボンブラン村醸造場へ派遣しました。そして傳蔵はボルドーで葡萄栽培の方法だけでなく、機械の操作や醸造技術なども習得して帰国たのです。

傳蔵の帰国後、傳兵衛は茨城県稲敷郡岡田村(現在の牛久市)女化原に「神谷葡萄園」と名づけられたこの葡萄園を開墾し、1903(明治36)年には、ボルドー地区の最新様式を採り入れた本格的なワイン醸造場「牛久醸造場(現:牛久シャトー)」を完成させました。

日本初の本格的ワイン醸造場「牛久シャトー」

そしてこの「牛久醸造場」は、ブドウ栽培から醸造までの一貫した大規模醸造体制を確立し、フランス仕込みの傳蔵の技術指導もあって、品質の高いワインを生産することにより、数々の名誉ある賞を受賞しました。

牛久の神谷傳兵衛と甲州市の宮崎光太郎

しかし、特筆すべきは、神谷傳兵衛も甲州市の宮崎光太郎と同様、ワイン普及のために工夫を試み、日本のワイン文化に貢献していることです。

人気商品の「蜂印香竄(こうざん)葡萄酒」は、日本人の食生活に馴染むように、輸入ワインにハチミツや漢方薬を加えて、甘味葡萄酒に改良したものでした。

未開封の蜂印ワイン

「蜂印」という名称は、かつて傳兵衛が「Beehive(蜂の巣箱)」というフランス産ブランデーを扱ったことに因み、「香竄(こうざん)」は「隠しても隠し切れない、豊かなかぐわしい香り(樽のなかの熟成ワインのように)」という意味ですが、父兵助の俳句の雅号でもあり、親の恩を忘れないために命名されたと言われています

ハチぶどう酒と神谷傳兵衛

さらに、神谷傳兵衛は、事業のかたわら、生涯を通して数多くの文化事業慈善事業にも取り組み、災害時には救済活動を行い、羅災窮民のために私費から衣類、農具も支給しています。また教育や社会公益事業への関心も高く、多額の寄付もしています。特に自家にあった美術骨董品すべてを東京帝室博物館(現:東京国立博物館)へ寄贈したことは世間を驚かせましたが、彼はこれらの宝を多くの人々に触れてもらうことが社会貢献と考えたのでしょう。

国指定重要文化財「牛久シャトー」

今日、オエノングループの「牛久シャトー」を訪れると牛久醸造場の経営理念だけでなく、神谷傳兵衛のこの事業を通じた社会貢献の精神が伝わってきて、ヨーロッパ貴族の「ノブレス・オブリージュ」を感じました。

「ノブレス・オブリージュ」とは「位高ければ徳高きを要す」といった意味ですが、日本ワイン140年の歴史を振り返ると、牛久の神谷伝兵衛だけでなく甲州の宮崎光太郎からもその精神が伝わってきます。

神谷傳兵衛と牛久シャトー

すなわち、日本ワインの文化の源には偉大な先駆者の高貴な精神が宿っているのです。

日本ワイン140年史 ~国産ブドウで醸造する和文化の結晶~

所在自治体〔山梨県:甲州市 茨木県:牛久市〕

牛久市の日本遺産

牛久シャトーのワインセラー

国産ブドウを原料とし、日本国内で醸造される「日本ワイン」。

その140年にわたる歴史において重要な地位を占めるのが山梨県甲州市と茨城県牛久市です。

甲州市は地元のブドウ農家との共存繁栄をはかり、広大なブドウ畑と新旧 30 ものワイナリーを誕生させるに至りました。

牛久市の「牛久シャトー」は、ブドウ栽培から醸造までの一貫した工程を構築し、大規模な醸造体制を確立しました。

明治の文明開化期、国営では果たせなかったワイン醸造を、それぞれの地域の特性を生かして民間の力で成し遂げたのです。

切磋琢磨して日本のワイン文化の広まりに貢献した二つのまちに息づく歴史を知れば、ワインの味わいもより深くなります。

一般社団法人日本遺産普及協会と日本遺産検定

私は2023年、「日本遺産ストーリー」を通じて地域の魅力を国内外に発信する目的で、有志とともに一般社団法人日本遺産普及協会を立ち上げました。そして、協会では日本遺産ブランドの普及と日本各地の文化や伝統の普及・活用に資する目的で日本遺産検定を実施しています。
本検定は3級・2級・1級に分かれ、まずは3級(ベーシック)が開始されていますので、「日本遺産」をはじめ「日本文化」「日本史」「地域振興」に関心のある方は、下記の『日本遺産検定3級公式テキスト』(黒田尚嗣編著・一般社団法人日本遺産普及協会監修)を参考に受験していただければ幸です。お問合せ先・お申し込み先:一般社団法人日本遺産普及協会

平成芭蕉メッセージ ~「旅の質」が人生を変える

「小説が書かれ読まれるのは人生がただ一度であることへの抗議」という言葉がありますが、私にとって旅することは、一度限りの人生を最大限に楽しむための創造活動なのです。そして私は、人生を楽しむために必要な「心のときめき」は、「知恵を伴う旅」を通じて得られると考えています。

そこでこの度、私はその知恵を伴う日本遺産や世界遺産の旅を紹介しつつ、平成芭蕉独自の旅の楽しみ方とテーマ旅行に関する企画アイデアノート、さらに著者が松尾芭蕉の旅から学んだ旅行術について紹介した『平成芭蕉の旅指南 人生が変わるオススメの旅 旅の質が人生を決める』と題した本を出版しました。このブログと合わせてご一読いただければ幸です。

私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って日本遺産を旅しています。

平成芭蕉の日本遺産

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この「平成芭蕉の日本遺産」は、単なる日本遺産登録地の紹介や旅情報の提供ではなく、「平成芭蕉」を自称する私が、実際に現地を訪れて、地元の人と交流し、私が感じたことや認定されたストーリー対する私自身の所見を述べた記録です。

「令和の旅」へ挑む平成芭蕉

*「平成芭蕉の旅物語」サイトマップ参照

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