投下された原子爆弾の悲惨さを今に伝える広島の「原爆ドーム」
平成芭蕉の「世界遺産への旅」
人類が犯した悲惨な出来事を伝える「負の世界遺産」原爆ドーム
世界遺産の中には、人類が犯した悲惨な出来事を伝え、そうした悲劇を二度と起こさないための戒めとなる物件として、ナチス・ドイツがユダヤ人を虐殺した強制収容所アウシュヴィッツなどの「負の世界遺産」があります。
ロシア軍がウクライナ侵攻の過程で、核兵器を利用するのではないかと危惧されていますが、私は今こそ核兵器の惨禍を伝える広島の「負の世界遺産 原爆ドーム」を以て戦争の即時停止を世界に訴えるべきだと思います。
広島に原爆が投下された理由は、戦争のための物資が多く集められており、アメリカ人の捕収容所がなく、当日、広島の上空は晴れ渡っており、原爆の威力を調べることに好条件であったからだと言われています。そしてこの広島に落とされた原爆は、人類史上初めて実戦で使用された核兵器で、爆発とともに強烈な熱線と放射線を放出し、市街の建物だけでなく、人や動物、生態系のすべてを根こそぎ破壊しました。さらに、生き延びた人々にも放射線による残虐な後遺症を与えました。
広島の「原爆ドーム」は、戦争による原爆投下被害の悲惨さと辛く悲しい歴史を今に伝える建築物で、設立当初は「広島県物産陳列館」という名称でしたが、原爆投下時には「広島県産業奨励館」と呼ばれていました。
この建物の設計者は、ヤン・レツルというチェコの建築家で、一部鉄骨を使用した煉瓦造、全体は窓の多い3階建ての構造でしたが、正面中央部分に5 階建の階段室、その上に高さ4メートルの銅板で覆われた楕円形ドームが載せられていました。また、敷地内には600坪の大きな庭園があり、和風庭園だけでなく噴水付きの洋風庭園もありました。
当時の広島市内は木造2階建ての建物が多かったので、このドームのあるヨーロッパ風建築は珍しく、市民の目を引く建物であったそうです。しかし、昭和20(1945)年8月6日午前8時15分、この「広島県産業奨励館」から南東約160メートル、高度約 600メートルのところで、人類史上初の原子爆弾が炸裂し、建物は爆風と熱線を浴びて瞬時に大破したのです。天井から火を吹いて建物は全焼しましたが、幸いなことに建物のほぼ真上から爆風が吹き下ろし、その爆風が多くの窓から吹き抜けたため、本館の中心部は奇跡的に倒壊を免れました。
しかし、建物の中にいた人はすべて即死しており、核兵器の恐ろしさを感じさせます。戦後、この被爆当時の惨状を残す建物の残骸は、頂上のドーム、鉄骨の形から、いつしか「原爆ドーム」と呼ばれるようになりました。この「原爆ドーム」が今に残ったきっかけは、1歳の時に被爆し、15年後に白血病で亡くなった女性が残した日記でした。「あの痛々しい産業奨励館だけが、いつまでも、おそるべき原爆のことを後世にうったえかけてくれるでしょう」と記された日記に心を打たれた人々が、原爆ドーム保存への運動を始めたのです。
そして広範な市民運動の結果、平成7(1995)年に国の史跡に指定され、平成8(1996)年12月には世界文化遺産へ登録されました。被爆した当時の姿のまま立ち続ける「原爆ドーム」は、戦争による核兵器の惨禍を伝えると同時に、時代を超えて核兵器の廃絶と世界の恒久平和の大切さを訴える人類共通の平和記念碑です。
また、世界遺産に登録されてはいませんが、原爆ドームとともに人類が二度と同じ過ちを繰り返さないように平和への祈りを込めて、原爆に焼き尽くされた繁華街跡に平和記念公園もつくられています。
公園内には核兵器の廃絶と世界平和を目指して設置された「平和の鐘」や原爆で亡くなった子供たちの霊を慰めるために立てられた「原爆の子の像」、そして核兵器の廃絶を願って1964年8月1日に点火された「平和の灯」があり、世界から核兵器がなくなるまで灯され続けます。
そこで、私は世界平和のためにもこの原爆ドームという「負の世界遺産」の価値を再認識し、今こそ核兵器の恐ろしさと人命の大切さを日本から世界に発信すべきかと思います。
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。