モンテネグロの世界遺産「アドリア海の秘宝」コトル
ヨーロッパ最南部のフィヨルド「コトルの自然と歴史地域」
日本には厳島神社という「海上の神社」がありますが、「海上の教会」と言えば、旧ユーゴスラビア連邦の一員であったモンテネグロのコトル湾に浮かぶ「岩礁のマリア教会」を思い出します。
コトルは2000年以上の歴史をもつアドリア海に面した町で、地中海では珍しいフィヨルド地形をなすコトル湾の奥に位置しています。
そのため、大型船も停泊できる天然の良港であり、複雑な海岸線と険しいい山々に囲まれた堅固な要塞でもあります。
旧市街の背後の丘から見ると、まるで北欧にあるガイランゲルフィヨルドに来たような感じがします。
「岩礁のマリア教会」は、コトル湾に浮かぶ島の上に建つ海上の教会ですが、これはかつてこの島の岩礁に聖母マリア像が流れ着き、地元の船乗りがこのマリア像を祀るために建てたものです。
地元の人々は長い航海の安全を祈願するためにこの教会を訪れ、無事に戻ると感謝を込めて銀のプレートを寄進しました。そして彼らは交易先のヴェネツィアから持ち帰ったステンドグラスで教会の窓を飾ったのです。
コトル旧市街に残るカトリック文化とセルビア正教文化
趣のある石畳の路地が走る旧市街には、彼ら船乗りの交易による富で築かれた豪華な館や美しい教会が立ち並んでいますが、コトルはローマ・カトリック文化圏とギリシャ(セルビア)正教文化圏の境界にあるためか、街には両方の教会が建っています。
しかし、コトルを代表する聖トリプン大聖堂は、ローマ・カトリックに属し、12世紀創建時のロマネスク様式の姿で、アーチに残されたフレスコ壁画や聖遺物など、見応えのある教会です。
2度にわたる地震で被害を受け、バロック様式の堂々と正面に聳える双塔は、地震後に加えられました。
塔以外は創建当時の形をとどめており、身廊と側廊に架かるアーチには古いフレスコ画が描かれていました。
また、15世紀の主祭壇も残っており、上部はスイスのバーゼルで造られ、下部はコトルの金細工師によって造られたと言われています。
奥の2階には聖遺物展示室があり、金色に輝く聖具の数々や古書、釣鐘などが展示されており、繊細なレリーフの柱頭を持つ柱やアーチも残っています。
しかし、展示品はベネツィア商人によってもたらされたトルコの宝飾品や絵画が多く、トルコのイスタンブールに来ているようにも感じました。
このベネツィア商人の活躍や当時の航海の様子は、18世紀に建てられたバロック様式の館・グルグリナ宮殿を利用した海洋博物館で見ることができます。
館内には1764年ごろの地中海の海図をはじめ航海具、16世紀から18世紀のガレオン船の模型、たくさんの銃器、装飾品や衣装などが展示されており、当時の交易による繁栄が偲ばれます。
ギリシャ正教の教会としては、スヴェタ・ニコラ広場に面し、1195年の建造されたセルビア正教会の聖ルカ教会が印象的で、特に左奥にあった金色に輝くイコノスタス(イコンで覆われた内陣と至聖所を区切る壁)は時代を感じさせてくれます。
2度の大地震にも耐えた頑丈な石造りで、ロマネスク様式の建物ですが、半分しか残されていないフレスコ画は必見です。
スヴェタ・ニコラ広場に面するもう一つの大きな教会は1909年に創建された正教の聖ニコラ教会で、広い教会内には金や銀のイコンがたくさん並んでいます。
もともとここには1540年にドミニカ会修道院がありましたが、1896年の火災で焼失してしまい、聖ニコラ教会として再建されました。
このコトルに限らずバルカン半島には、国土のわりに教会が多いのですが、海上の教会の存在を考えれば、これらの教会はヴェネツィアが築いた城壁同様、オスマントルコのイスラム勢力に対する防波堤のような役割も果たしていたのではないかと思います。
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。