ノイシュヴァンシュタイン城近郊の森とウォルト・ディズニー
アメリカのアナハイムに開園した最初のディズニーパークDisneylandの中心にそびえ立つ城のモデルは、ドイツの「ノイシュヴァンシュタイン城」であることは有名です。
、これはウォルト・ディズニーが童話原作のアニメーションに携わった最後の作品『眠れる森の美女』を宣伝する目的から選ばれたと言われています。
ノイシュヴァンシュタイン城は、南ドイツのバイエルン州フュッセン近郊の森の中、周囲を威圧するかのように美しくそびえる中世風の城ですが、これがウォルト・ディズニーの「眠れる森の美女」のイメージと同化して夢の国Disneylandの城にもなったのです。
しかし、このノイシュヴァンシュタイン城は伝統的な石造りの築城方式ではなく、城館に付属すべき聖堂もないために、世界遺産には登録されていませんが、ドイツの観光ガイドなどには必ずといっていいほど紹介されており、誰もが一度は訪ねてみたい旅行地です。
そこで私はウォルト・ディズニーのイメージした眠れる森をテーマとした旅を考えてみました。
ノイシュヴァンシュタイン城の森とロマンティック街道
「森」という言葉から連想される私のイメージは、「コトコトコットン コトコトコットン」の『森の水車』に歌われる、楽しい春を告げる緑豊かな明るい森です。そして森と言えば林も思い浮かびますが、木、林、森という「木」の足し算は、木々のイメージの掛け算でもあります。
実際、「森」の語源は「盛り」で、樹木が勢いよく成長し、盛んに葉を茂らせ、元気でみずみずしい姿のイメージです。しかし、「林」は「生(は)やし」、すなわち人工的に植えられて育った木々を意味します。
『森の水車』に似たドイツの楽曲『Die Mu(̈)hle im Schwarzwald(黒い森の水車)』に登場するシュヴァルツヴァルト(黒い森)は、ほとんどが人間の手による人工林なので「黒い林」と呼ぶのが正しいのかも知れません。
ドイツ人は森を歩くのが好きだと言われていますが、これはドイツの森の多くが人工林のため、見通しがよく、歩きやすいからだと思います。
特にロマンティック街道のフュッセンに近い山麓では、『眠れる森の美女』が住んでいそうな「白鳥城」とも呼ばれるノイシュヴァンシュタイン城やホーエンシュヴァンガウ城などの美しいい城を望みながら森の散策ができます。
ロマンティック街道協会の公式サイトにも「ロマンティック街道という名称は、国内外の旅行者が中世の町や夢の城ノイシュバンシュタイン城を見て感じるもの、すなわち過去に戻ったかのような感覚と魅力を表現している」と説明されており、白鳥城周辺の森は、ウォルト・ディズニーの夢の国に通じるものがあります。
日本の森は神々しい神社の「杜」
一方、日本で「森」と言えば「京の糺(ただす)の森」、「大坂の信太(しのだ)の森」、「江戸の鈴ヶ森」のように、暗くおどろおどろしい「杜」のイメージもあります。
大阪府和泉市にある葛葉稲荷神社の「信太の森」は、古歌の歌枕にもなっており、この森にすむ白狐が美女に姿を変えて人間と結婚し、生んだのが最近話題の陰陽師である安倍清明(あべのせいめい)と言われています。
京都市左京区の「糺の森」は、賀茂御祖神社(下鴨神社)境内にある社叢林で、古くは『源氏物語』や『枕草子』にも歌われた史跡です。
鈴ヶ森の名前は、今の品川区の鈴ヶ森八幡と称された磐井神社の森に由来し、江戸幕府がここに刑場を設けたことにより、全国に知られるようになりました。
鈴ヶ森が八幡社の森であり、京都の糺(ただす)の森が下鴨神社の森であるように、かつての日本の森は「杜」と書くほうがイメージを伝えやすいようです。
私が紅葉の時にしばしば訪ねる「糺(ただす)の森」は常緑の針葉樹が少なく落葉樹が多いので、神秘的ですがドイツの森のような明るさもあって、散策にはおすすめの森です。また、ノイシュヴァンスタイン城は世界遺産ではありませんが、こちらは「古都京都の文化財」という世界遺産に登録されています。
木を見て森を見ないとか、森を見て木を見ないとか言われますが、私の提案する「森の旅」は、命の尊さを無言のうちに語る森の言葉を聞くと同時に木や森への畏れと親しみの心を感じる旅です。
「令和」の幕開けに木漏れ日が誘う森の万華鏡を歩いてみてはいかがでしょうか。
<具体的な旅先>
ノイシュヴァンシュタイン城…ワーグナーをこよなく愛し、憧れだった中世騎士の世界を夢見たロマンチストのルートヴィヒ2世が建てた「眠れる森」に佇む夢の城です。
賀茂御祖神社の糺の森…京都市左京区にあり、縁結びのパワースポットとして人気の下鴨神社の参道に広がる広大な森で京都随一の癒しスポットです。
*平成芭蕉のテーマ旅行「森の旅」は旅行読売2019年7月号に掲載されました
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って令和時代を旅しています。
見るべきものは見て、聞くべき話は聞いた。では旅に飽きたかと問われれば、いえいえ、視点が変わればまた新たな旅が始まるのです。平成芭蕉はまだまだ「こんな旅があった」と目からウロコのテーマ旅行にご案内します。すなわち、「ときめき」を感じる旅から人は変わり、生き方も変わり、人生も変わるのです。