令和の「平成芭蕉」

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平成芭蕉の世界遺産

平成芭蕉の世界遺産 ニュージーランド〜マオリ族のトンガリロ国立公園

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平成芭蕉の世界遺産~マオリ族の聖地「トンガリロ国立公園」

平成芭蕉の「世界遺産への旅」

平成芭蕉の「世界遺産への旅」

2019年は日本国中がラグビーワールドカップに熱中しましたが、ニュージーランドを代表するラグビーチームであるオールブラックスが試合前に披露した踊りは、マオリ族の伝統民族舞踊で『カパ・ハカ』と呼ばれています。本来は相手を威嚇する舞いですが、感謝と敬意を表す踊りと言われています。

この『カパ・ハカ』には、ニュージーランド北島中央部のトンガリロ山をテーマにするものが多く、この地がマオリ族にとって「心のよりどころ」となっていることがうかがい知れます。このマオリ族の聖地は、1894年にニュージーランド初の国立公園「トンガリロ国立公園」に指定され、周辺のロトルアからタウポなどの町も含め、大地熱地帯と呼ばれる火山活動が盛んな地域にあります。

このニュージーランド初の国立公園は、キウイをはじめ60種以上の鳥類の楽園として知られ、世界的にも珍しい自然景観が見られることから1990年に世界自然遺産として登録されましたが、マオリ族にとってトンガリロは単なる自然ではありません。彼らにとってより大切だったのは、トンガリロが『神聖な土地』であるということでした。1993年にトンガリロが文化遺産としても登録され、世界複合遺産になった背景には、マオリ族と精神的なつながりをもつトンガリロの文化的価値も認めて欲しいと、マオリ族から要請があったからと言われています。

ニュージーランドの先住民マオリは、北島の最高峰であるルアペフ(爆発する穴)山を筆頭に、ナウルホエ(投げられた熱い石)山トンガリロ(南からの冷たい風)山の三つの山に畏怖の念を抱いていました。ナウルホエ(投げられた熱い石)、ルアペフ(爆発する穴)の名前は、噴火した様子を連想させるようなネーミングですが、トンガリロ(南からの冷たい風)だけがちょっと違いますが、これには発見当時の伝説があります。

マオリ族の聖地トンガリロ国立公園

ニュージーランドに最初に移り住んだマオリ族は、北島東部のベイ・オブ・プレンティに上陸後、内陸に向かって探検を始め、マオリ族の司祭、ナトロイランギはロトルア、タウポ湖を探検した後、タウポ湖の南の対岸に位置するトンガリロ山を見上げ、トンガリロ山登頂を企てました。しかし、トンガリロ山登頂時に、凍死寸前の状況にまで追い込まれ、その時にホワイト島に残っていた二人の妹に「火を持ってきてくれ」と叫びました。その声が南風に乗り、妹のところまで届き、現在の環太平洋火山帯の山々が噴火し、彼のもとに火が届いたおかげで、彼は一命を取り留めることができたと言われています。

ナトロイランギのメッセージは、マオリ語で南からの風を意味する「Tonga-riro」に乗って届いたということですが、ニュージーランドは南半球の国ですので、南風は日本での北風のように冷たく、「南からの冷たい風」=トンガリロという名がつけられました。

文字を持たないマオリ族はこうした様々な伝説を伝えることで、自らの歴史を子孫に残していますが、この神聖な力が込められたトンガリロの山々にこそ「タープー」が宿っていると考えられていました。タープーとは「聖なるもの」「荘厳なるもの」という意味で、19世紀後半、ヨーロッパ人が入植し、土地が都会と農地に分割されるようになると、マオリの人々は三つの山に宿るタープーが損なわれることを恐れました。

トンガリロ山のエメレルド湖

そこで、当時の首長ホロヌク・テ・ヘウヘウ・トゥキノ4世は、入植者による乱開発を防ぐために、自分が預かっていた山々のタープーを、英連邦のビクトリア女王に譲り、1887年、三つの山々とその周辺の土地を保護区として、ニュージーランド政府と国民に託したのです。

保護区となったトンガリロ国立公園内には、今日、数多くのトレッキングコースがありますが、中でも人気は「トンガリロ・アルパイン・クロッシング」と呼ばれる山岳地帯を縦走するコースです。

マオリ族が崇めるトンガリロ国立公園の大自然を体感するならぜひ歩いてみたいコースで、月面のような光景が広がるクレーターや、色鮮やかなエメラルド湖など、様々な景観が楽しめます。

富士山に似た成層火山ナウルホエ山

ルアペフ山は、今も活動を続ける活火山で、数年ごとに噴火し、蒸気と火山灰の巨大な柱を噴き上げています。また、トンガリロ山もクレーターがいくつもあり、あちこちの噴気孔から硫黄臭のする蒸気が噴出し、不気味な雰囲気が漂っています。しかし、この2つの山の間にそびえる、成層火山のナウルホエ山は、日本のシンボルである富士山に似ており、均整のとれた美しい山容が見る者をとりこにします。また、この山は映画『ロード・オブ・ザ・リング』「滅びの山」として登場し、燃え盛る炎が火口から吹き出しているマウントドゥームは、このナウルホエ山がモデルとなりました。

この荒々しい地形の土地に、なぜこれほど優美な山が生まれたのか、不思議な気分になります。美しい富士山も信仰の山ですが、このトンガリロ国立公園の山々も、マオリ民族の信仰心が美しさを際立たせているような気がします。

祝!日本の縄文文化「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産登録

「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されたことを記念して、私はみちのくを旅した芭蕉の研究本『松尾芭蕉の旅に学ぶ』と共に『縄文人からのメッセージ』というタイトルで縄文文化を語り、平成芭蕉の『令和の旅指南』シリーズ(Kindle電子本)として出版しました。人生100歳時代を楽しく旅するために縄文人の精神世界に触れていただければ幸いです。

また、日本人の心に灯をつける『日本遺産の教科書』、長生きして人生を楽しむための指南書『人生は旅行が9割』、感情の老化を防ぐ私の旅日記である『生まれ変わりの一人旅』とともにご一読下さい。

★平成芭蕉ブックス
 ①『人生は旅行が9割 令和の旅指南Ⅰ』: 長生きして人生を楽しむために 旅行の質が人生を決める
 『縄文人からのメッセージ 令和の旅指南Ⅱ』: 縄文人の精神世界に触れる 日本遺産と世界遺産の旅
 『松尾芭蕉の旅に学ぶ 令和の旅指南Ⅲ』:芭蕉に学ぶテーマ旅 「奥の深い細道」の旅
 ④『生まれ変わりの一人旅 令和の旅指南Ⅳ』: 感動を味わう一人旅のススメ
 ⑤『日本遺産の教科書 令和の旅指南』: 日本人の心に灯をつける 日本遺産ストーリーの旅

平成芭蕉「令和の旅指南」シリーズ

参考記事:世界遺産の旅における「へー、そうだったの」

★関連記事:平成芭蕉の旅のアドバイス「旅して幸せになる~令和の旅」

私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています

平成芭蕉の世界遺産

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「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。

「令和の旅」へ挑む平成芭蕉

*「平成芭蕉の旅物語」サイトマップ参照

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