平成芭蕉の旅の原点は「巡礼」
「巡礼」という言葉の意味
「巡礼」といえばイスラム教徒のメッカへの巡礼(ハッジ)やキリスト教徒が目指すエルサレム、サンチャゴ・デ・コンポステーラなどへの巡礼を思い浮かべますが、これらはともに居住地と遠方にある聖地の間を移動する旅です。
すなわち「巡礼」という言葉が本来「通過者」とか「異邦人」を意味するように、赴く聖地は居住地の近くのモスクや教会ではなく、遠方にある非日常の聖域であり、そこで聖なるものに触れた後、また日常空間に戻る行為が巡礼です。
数ある巡礼の中でもイスラムの巡礼は、他の宗教のそれと比べて時の規則(イスラム暦の12月8日目から10日目までに行う)もあり、メッカという遠い聖地で「巡(順)」に「礼」をして回る文字通りの「巡礼」を3日間行う非日常的な儀礼です。
お遍路さんの「巡拝」と聖地「巡礼」
それに対して日本の巡礼は「巡拝」にも似ており、伊勢参宮や西国33か所、四国88か所遍路など、聖地や霊場を順に参拝して信仰を深め、心身の蘇りや新生の御利益を得るための行為で、往路は修行的な意味があっても復路は慰安や観光の旅に移行する場合が多く
「伊勢参り、大神宮にもちょいと寄り」
と川柳の一節にも紹介されています。
この違いはイスラム教やキリスト教が一神教であるが故に聖地と居所とを直線的に移動するのに対して、日本は森羅万象に神の発現を認め、複数の神仏を信仰するが故に遍路のような周回や伊勢参宮での寄り道が可能とされたのではないでしょうか。
ただ、弘法大師の四国遍路は、本来、僧侶の修行の場であり、庶民の生活にゆとりができた17世紀以降になって、伊勢参宮同様に庶民が旅に出る方便になったものです。
神仏祈願の原点は伊勢の「おかげ参り」
しかし、日本人の神仏への祈願は「日ごろの無沙汰や感謝が第一」であり、お願い事を優先するものではなく、何事もなく平安に過ごせたことに対しての「おかげ参り」でした。
すなわち、「お参り」とは神様の前で自分自身と向かい合う行為であり、神社は、そこで自分の立ち位置を確認した上で、神様に覚悟を伝える神聖な場所なのです。
しかし、その神聖な場所の近くにも普通に暮らす日常生活空間があり、そこを通過することで異邦人である旅人が思いがけない出会いや感動を体験する、これも「お参り」の旅の醍醐味です。
伊勢の赤福の『赤心慶福』なる理念は、公的な福祉を受けられなかった庶民を巡礼地において「おもてなし」の心(赤心)で寛容に受け入れ、巡礼者の幸せ(福)を喜ぶ(慶)ことから来ています。
実際、聖地の近くにも普通に暮らす日常生活空間があり、そこを通過することで異邦人である旅人が思いがけない出会いや感動を体験する、これこそが巡礼の旅の醍醐味です。
<具体的な旅先>
伊勢神宮…正しくは「神宮」で、本来は内宮・外宮をはじめ125社の神々を巡る。倭姫命に導かれた天照大御神を祀る日本人の心のふるさとであり、日本最高の超絶パワースポットです。
善通寺…弘法大師空海の生誕地に父である佐伯善通を開基として創建された四国八十八か所霊場の第七十五番札所で京都の東寺、高野山と共に弘法大師三大霊場に数えられる。
*平成芭蕉のテーマ旅行「巡礼の旅」は旅行読売2018年7月号に掲載されました
平成芭蕉メッセージ ~「旅の質」が人生を変える
「小説が書かれ読まれるのは人生がただ一度であることへの抗議」という言葉がありますが、私にとって旅することは、一度限りの人生を最大限に楽しむための創造活動なのです。そして私は、人生を楽しむために必要な「心のときめき」は、「知恵を伴う旅」を通じて得られると考えています。
そこでこの度、私はその知恵を伴う日本遺産や世界遺産の旅を紹介しつつ、平成芭蕉独自の旅の楽しみ方とテーマ旅行に関する企画アイデアノート、さらに著者が松尾芭蕉の旅から学んだ旅行術について紹介した『平成芭蕉の旅指南 人生が変わるオススメの旅 旅の質が人生を決める』と題した本を出版しました。このブログと合わせてご一読いただければ幸です。
★関連記事:平成芭蕉の旅のアドバイス「旅して幸せになる~令和の旅」
私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って旅をしています。
見るべきものは見て、聞くべき話は聞いた。では旅に飽きたかと問われれば、いえいえ、視点が変わればまた新たな旅が始まるのです。平成芭蕉はまだまだ「こんな旅があった」と目からウロコのテーマ旅行にご案内します。すなわち、「ときめき」を感じる旅から人は変わり、生き方も変わり、人生も変わるのです。
平成芭蕉は元禄時代に生きた俳聖松尾芭蕉の旅から学んだことをお伝えします。旅とは日常から離れ、いつもと違う風、光、臭いなど五感を通じて自分を見つめ直す機会です。そしていつもと違う人に会い、いつもと違う食事をとることで、考え方や感じ方が変わります。すなわち、いい旅をすると人も変わり、生き方も変わり、人生も変わるのです。平成芭蕉が体験した感動を「旅行+知恵=人生のときめき」をテーマにお話しします。