旅の想い出を創造する石と奈義町現代美術館(NagiMOCA)の現代アート
小豆島に引き続き、今回は石をテーマとした日本遺産の視察でカブトガニや日本画家小野竹喬で知られる岡山県笠岡市を尋ねましたが、あまりの暑さに笠岡諸島の採石場視察はあきらめて、かねてより訪ねてみたかった奈義町現代美術館(通称Nagi MOCA)で石の彫刻家、北川太郎氏の作品と現代アートを鑑賞することにしました。
この現代美術館NagiMOCAは、さる3月5日、「建築界のノーベル賞」とも言われるプリツカー賞を受賞された建築家の磯崎 新氏がプロデュースした、まったく新しい構想から設立された岡山県勝田郡奈義町にある美術館です。
那岐山のふもと「奈義町現代美術館」
磯崎新氏は大分県出身で、建築家の丹下健三に師事し、ポストモダン建築の旗手として国際的に活躍され、代表的な作品には大分県立大分図書館(1966年)、日本万国博覧会 お祭り広場(1970年)、つくばセンタービル(1983年)などがあります。
Nagi MOCAはその磯崎新氏の監修で、宮脇愛子氏、岡崎和郎氏、荒川修作+マドリン・ギンズ氏らの特定アーティストに斬新な構想からなる作品を依頼し、美作の秀峰、那岐山のふもとにそれらの作品を空間建築アートとして展示しています。
それぞれのテーマは「大地」《うつろひ》、「月」《HISASHI-捕遺するもの》、「太陽」《偏在の場・奈義の龍安寺・建築する身体》となっています。
常設展示の「大地」
NagiMOCAの常設展示のテーマ
「大地」の展示は屋外にあって、日本三大局地風の一つとされる那岐山から吹き下ろす「広戸風」があたるように設計されており、今日は無風でしたが、風があれば木々が揺れるがごとく、自然に左右される大地がよりリアルに連想されるのだと思います。
「月」の展示は音響効果の高い建造物で、声が響くということは、夜になれば月明りが指す幻想的な空間で、虫の声などの自然界の音が鑑賞できるのでしょう。
常設展示の「月」
「太陽」の展示はもちろん太陽の南中を意識して作られており、「光」と「影」のコントラストが楽しめます。
しかし、私は宙に浮いたような龍安寺の石庭と鉄棒やシーソーとの配置が、東洋と西洋との調和にもとれて、ここに「真の意味で西洋と東洋の建築を結び付けた」磯崎新氏のコンセプトを感じました。
この美術館では、通常の美術館のような視覚が中心ではなく、自然界の音に対する聴覚や風に対する嗅覚などの五感を駆使して全身で何かを感じる意識が必要です。
すなわち、作品だけでなく、その作品をとりまく空間の変化を感じながら、過ぎゆく時間を忘れて瞑想できる究極のリラクゼーションの場です。
常設展示の「太陽」
開館25周年記念 石の彫刻家「北川太郎展―手仕事信仰」
今回の石の彫刻家、「北川太郎展―手仕事信仰」は、この奈義町現代美術館の開館25周年記念展示で、手仕事にこだわった若き彫刻家、北川太郎氏の意欲作が展示されていました。
北川太郎氏は文化庁新進芸術家在外研修で南米に派遣され、ペルー共和国のMuseo Pedro de OSMAにて個展を開かれるなど、数々の実績と多彩な受賞歴を持つ注目の若手彫刻家です。
今回の展示はそのペルーでの作品が中心で、「存在しないものの魅力を引き出す」ことに着目したシリーズ「静けさ」です。
石の彫刻家「北川太郎展」
私も南米が好きで、インカ文明やマヤ文明、さらにはティワナク文明の石造物など数多くの石造彫刻を観てきましたが、やはり石には「意思」があって、人に語りかけてくる心があるように感じます。
すなわち、この作品は今、日本にあっても「私はペルーの出身です」とのささやきが聞こえるのです。
そして静かに作品を眺めていると、さまざまな思いが浮かんできて、表面に刻まれた微妙な石の表情は、私のあらゆる想いを受け止めてくれるかのようでした。
私は縄文土器も神々という見えない存在をイメージしたものではないかと考えていますが、北川氏の作品からもインカのケチュア族の見えない魂がこもっているように感じました。
さらに「手仕事信仰」を彷彿させる黒い土偶のような作品は、南米ボリビア・チチカカ湖畔のティワナク遺跡のカラササーヤ広場に立つ石像(モノリート)「ポンセ」を連想させます。
北川太郎展‐手仕事信仰
人は石を動かし、石を刻み、石を用いて暮らしをたててきましたが、人の心を動かして信仰の対象にもなっています。
私は北川氏の「静けさ」なる石の作品は、現代人が忘れつつある心の安らぎを取り戻す「信仰の対象」になるような気がしました。
この奈義町現代美術館は、アーティストの作品と空間を楽しむ世界であり、未来の美術館のあり方を示す世界初の公共施設かと思います。
今回ご挨拶させていただいた岸本和明館長もおっしゃっておられましたが、この美術館を理解するには時間がかかるかと思いますが、図録やネットにおいての鑑賞ではなく、実際に足を運んで全身の感覚で感じることによってのみ鑑賞できるという美術館の中の美術館です。
この風薫る那岐山のふもとで「建築家とアーティストが共同制作した空間的作品」を鑑賞された方は、日常では味わうことのできない感覚と創造性に目覚めていただけることと思います。
「太陽」の展示と空間
日本の縄文文化「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産!
「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されることを記念して、私はこのたび『縄文人からのメッセージ』というタイトルで令和の旅を語り、Amazonの電子本として出版しました。人生100歳時代を楽しく旅するために縄文人の精神世界に触れていただければ幸いです。日本人の心に灯をつける『日本遺産の教科書』、長生きして人生を楽しむための指南書『人生は旅行が9割』とともにご一読下さい。
★平成芭蕉ブックス
①『日本遺産の教科書 令和の旅指南』: 日本人の心に灯をつける 日本遺産ストーリーの旅
②『人生は旅行が9割 令和の旅指南Ⅰ』: 長生きして人生を楽しむために 旅行の質が人生を決める
③『縄文人からのメッセージ 令和の旅指南Ⅱ』: 縄文人の精神世界に触れる 日本遺産と世界遺産の旅
平成芭蕉ブックス『令和の旅指南』
★関連記事:平成芭蕉の旅のアドバイス「旅して幸せになる~令和の旅」
私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って日本遺産を旅しています。
平成芭蕉の旅語録
平成芭蕉は「検索すればわかる情報」より「五感を揺さぶる情報」を提供します。旅とは日常から離れ、いつもと違う風、光、臭いなど五感を通じて自分を見つめ直す機会です。そしていつもと違う人に会い、いつもと違う食事をとることで、考え方や感じ方が変わります。すなわち、いい旅をすると人も変わり、生き方も変わり、人生も変わるのです。
「令和の旅」へ挑む平成芭蕉
*「平成芭蕉の旅物語」サイトマップ参照
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平成芭蕉の旅語録~磯崎新監修の現代アートを味わう「奈義町現代美術館」
更新日:
旅の想い出を創造する石と奈義町現代美術館(NagiMOCA)の現代アート
小豆島に引き続き、今回は石をテーマとした日本遺産の視察でカブトガニや日本画家小野竹喬で知られる岡山県笠岡市を尋ねましたが、あまりの暑さに笠岡諸島の採石場視察はあきらめて、かねてより訪ねてみたかった奈義町現代美術館(通称Nagi MOCA)で石の彫刻家、北川太郎氏の作品と現代アートを鑑賞することにしました。
この現代美術館NagiMOCAは、さる3月5日、「建築界のノーベル賞」とも言われるプリツカー賞を受賞された建築家の磯崎 新氏がプロデュースした、まったく新しい構想から設立された岡山県勝田郡奈義町にある美術館です。
那岐山のふもと「奈義町現代美術館」
磯崎新氏は大分県出身で、建築家の丹下健三に師事し、ポストモダン建築の旗手として国際的に活躍され、代表的な作品には大分県立大分図書館(1966年)、日本万国博覧会 お祭り広場(1970年)、つくばセンタービル(1983年)などがあります。
Nagi MOCAはその磯崎新氏の監修で、宮脇愛子氏、岡崎和郎氏、荒川修作+マドリン・ギンズ氏らの特定アーティストに斬新な構想からなる作品を依頼し、美作の秀峰、那岐山のふもとにそれらの作品を空間建築アートとして展示しています。
それぞれのテーマは「大地」《うつろひ》、「月」《HISASHI-捕遺するもの》、「太陽」《偏在の場・奈義の龍安寺・建築する身体》となっています。
常設展示の「大地」
NagiMOCAの常設展示のテーマ
「大地」の展示は屋外にあって、日本三大局地風の一つとされる那岐山から吹き下ろす「広戸風」があたるように設計されており、今日は無風でしたが、風があれば木々が揺れるがごとく、自然に左右される大地がよりリアルに連想されるのだと思います。
「月」の展示は音響効果の高い建造物で、声が響くということは、夜になれば月明りが指す幻想的な空間で、虫の声などの自然界の音が鑑賞できるのでしょう。
常設展示の「月」
「太陽」の展示はもちろん太陽の南中を意識して作られており、「光」と「影」のコントラストが楽しめます。
しかし、私は宙に浮いたような龍安寺の石庭と鉄棒やシーソーとの配置が、東洋と西洋との調和にもとれて、ここに「真の意味で西洋と東洋の建築を結び付けた」磯崎新氏のコンセプトを感じました。
この美術館では、通常の美術館のような視覚が中心ではなく、自然界の音に対する聴覚や風に対する嗅覚などの五感を駆使して全身で何かを感じる意識が必要です。
すなわち、作品だけでなく、その作品をとりまく空間の変化を感じながら、過ぎゆく時間を忘れて瞑想できる究極のリラクゼーションの場です。
常設展示の「太陽」
開館25周年記念 石の彫刻家「北川太郎展―手仕事信仰」
今回の石の彫刻家、「北川太郎展―手仕事信仰」は、この奈義町現代美術館の開館25周年記念展示で、手仕事にこだわった若き彫刻家、北川太郎氏の意欲作が展示されていました。
北川太郎氏は文化庁新進芸術家在外研修で南米に派遣され、ペルー共和国のMuseo Pedro de OSMAにて個展を開かれるなど、数々の実績と多彩な受賞歴を持つ注目の若手彫刻家です。
今回の展示はそのペルーでの作品が中心で、「存在しないものの魅力を引き出す」ことに着目したシリーズ「静けさ」です。
石の彫刻家「北川太郎展」
私も南米が好きで、インカ文明やマヤ文明、さらにはティワナク文明の石造物など数多くの石造彫刻を観てきましたが、やはり石には「意思」があって、人に語りかけてくる心があるように感じます。
すなわち、この作品は今、日本にあっても「私はペルーの出身です」とのささやきが聞こえるのです。
そして静かに作品を眺めていると、さまざまな思いが浮かんできて、表面に刻まれた微妙な石の表情は、私のあらゆる想いを受け止めてくれるかのようでした。
私は縄文土器も神々という見えない存在をイメージしたものではないかと考えていますが、北川氏の作品からもインカのケチュア族の見えない魂がこもっているように感じました。
さらに「手仕事信仰」を彷彿させる黒い土偶のような作品は、南米ボリビア・チチカカ湖畔のティワナク遺跡のカラササーヤ広場に立つ石像(モノリート)「ポンセ」を連想させます。
北川太郎展‐手仕事信仰
人は石を動かし、石を刻み、石を用いて暮らしをたててきましたが、人の心を動かして信仰の対象にもなっています。
私は北川氏の「静けさ」なる石の作品は、現代人が忘れつつある心の安らぎを取り戻す「信仰の対象」になるような気がしました。
この奈義町現代美術館は、アーティストの作品と空間を楽しむ世界であり、未来の美術館のあり方を示す世界初の公共施設かと思います。
今回ご挨拶させていただいた岸本和明館長もおっしゃっておられましたが、この美術館を理解するには時間がかかるかと思いますが、図録やネットにおいての鑑賞ではなく、実際に足を運んで全身の感覚で感じることによってのみ鑑賞できるという美術館の中の美術館です。
この風薫る那岐山のふもとで「建築家とアーティストが共同制作した空間的作品」を鑑賞された方は、日常では味わうことのできない感覚と創造性に目覚めていただけることと思います。
「太陽」の展示と空間
日本の縄文文化「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産!
「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されることを記念して、私はこのたび『縄文人からのメッセージ』というタイトルで令和の旅を語り、Amazonの電子本として出版しました。人生100歳時代を楽しく旅するために縄文人の精神世界に触れていただければ幸いです。日本人の心に灯をつける『日本遺産の教科書』、長生きして人生を楽しむための指南書『人生は旅行が9割』とともにご一読下さい。
★平成芭蕉ブックス
①『日本遺産の教科書 令和の旅指南』: 日本人の心に灯をつける 日本遺産ストーリーの旅
②『人生は旅行が9割 令和の旅指南Ⅰ』: 長生きして人生を楽しむために 旅行の質が人生を決める
③『縄文人からのメッセージ 令和の旅指南Ⅱ』: 縄文人の精神世界に触れる 日本遺産と世界遺産の旅
平成芭蕉ブックス『令和の旅指南』
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って日本遺産を旅しています。
平成芭蕉の旅語録
平成芭蕉は「検索すればわかる情報」より「五感を揺さぶる情報」を提供します。旅とは日常から離れ、いつもと違う風、光、臭いなど五感を通じて自分を見つめ直す機会です。そしていつもと違う人に会い、いつもと違う食事をとることで、考え方や感じ方が変わります。すなわち、いい旅をすると人も変わり、生き方も変わり、人生も変わるのです。
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