世界遺産第一号のポーランドの古都「クラクフ歴史地区」
ポーランド文化の中心地、クラクフ旧市街
今日では数多くの世界遺産が登録されていますが、1978年の最初の制定時には12か所のみで、ポーランドの古都クラクフ歴史地区は、その世界遺産第一号として登録されました。
東はベラルーシにウクライナ、南にはチェコとスロバキア、西にドイツ、北はバルト海に囲まれたポーランドは、国土は緩やかな大地に覆われ、ヨーロッパの東と西を繋ぎ、多くの人やもの、文化が往来する国でした。
しかし、ヨーロッパの中央に位置しているがゆえ、戦争で何度も破壊や荒廃を経験し、一時は国家自体が消滅する危機に陥るものの第一次世界大戦後に復活を果たします。ポーランドの南に位置する都市クラクフは、11世紀から16世紀にかけて500年以上もの間、ポーランド王国の首都として栄えた古都で、第二次世界大戦ではナチス・ドイツの支配下に置かれますが、中世の建築物が残る町並みは奇跡的に戦火を免れます。
ポーランド文化の中心地といわれ、世界遺産に指定されたクラクフ旧市街の観光スポットは今も王国の輝きを語り継いでいます。その歴史地区には、中世の街並が残る旧市街、ヴァヴェルの丘の建物群、かつてのユダヤ教徒の街カジミエシュという三つの地区があります。ヴァヴェルの丘に建つヴァヴェル城は、旧市街の南に位置する城壁に囲まれた歴代ポーランド王の居城で、ルネサンス様式が施された部屋を見学できるほか、城壁内には旧王宮やヴァヴェル大聖堂、大聖堂博物館などがあり、緑の多い空間です。
ユダヤ文化が残るクラクフのカジミエシュ地区と中央広場
カジミエシュには、第二次世界大戦まで多くのユダヤ人が住んでおり、祈りを捧げるシナゴーグやヘブライ語が綴られたレストランが築かれ、映画『シンドラーのリスト』のロケにも使われたエリアです。この映画はドイツによるユダヤ人の組織的大量虐殺(ホロコースト)が東欧のドイツ占領地で進む中、ドイツ人実業家オスカー・シンドラーが1100人以上ものポーランド系ユダヤ人を救った実話を描いています。
しかし、クラクフ歴史地区の見どころは、旧市街に集まっており、旧市街の中央広場は、中世から残っている広場としてはヨーロッパでも最大級です。中央広場には織物会館、聖マリア教会、旧市庁舎塔といった街の歴史で欠かすことができない建物が建ち、壮観な景色に圧倒されます。
織物会館は織物を取引する場として13世紀に建設され、その後14世紀にゴシック様式、16世紀にルネッサンス様式へと変貌を遂げたクラクフの観光名所で、100mほど伸びた煉瓦造りの建物内の1階には、琥珀などポーランドを代表するおみやげが並び、2階はクラクフ国立美術館があり、18世紀から19世紀にかけてのアート作品が展示されています。
聖マリア教会の「ラッパ吹き」
また、特筆すべきは13世紀に築かれた2本の尖塔をもつゴシック様式の聖マリア教会で、教会内部も鮮やかなステンドグラスと黄金色に溢れ、そのまばゆさに息を呑むほどです。しかし、私が注目したのは美しいレンガ造りの建物ではなく、毎正時に高い塔の上の窓に現れる「ラッパ吹き」でした。
このラッパ演奏は曲の途中でピタッと止まってしまいますが、これは13世紀にモンゴル軍がクラクフを侵攻した際、塔にいたラッパ吹き手が襲撃に気づき、仲間たちに襲撃を告げるラッパを鳴らしましたが、敵の矢がのどを貫き亡くなってしまったことを表しています。すなわち、命と引き換えに街を守ったラッパ吹きの勇気を今に伝えているのです
ポーランドの首都だったクラクフは、ナチス侵攻以前にも13世紀半ばにモンゴル軍に攻め込まれて破壊された歴史があります。700年以上たった今でも、当時の出来事を伝えるラッパの音が鳴り続けているこの街には、様々な歴史を乗り越えてきた逞しさを感じます。
平成芭蕉メッセージ ~「旅の質」が人生を変える
「小説が書かれ読まれるのは人生がただ一度であることへの抗議」という言葉がありますが、私にとって旅することは、一度限りの人生を最大限に楽しむための創造活動なのです。そして私は、人生を楽しむために必要な「心のときめき」は、「知恵を伴う旅」を通じて得られると考えています。
そこでこの度、私はその知恵を伴う日本遺産や世界遺産の旅を紹介しつつ、平成芭蕉独自の旅の楽しみ方とテーマ旅行に関する企画アイデアノート、さらに著者が松尾芭蕉の旅から学んだ旅行術について紹介した『平成芭蕉の旅指南 人生が変わるオススメの旅 旅の質が人生を決める』と題した本を出版しました。このブログと合わせてご一読いただければ幸です。
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。