ウェストミンスター寺院(アビー)とロンドンの象徴「ビッグ・ベン」のウェストミンスター宮殿
英国国王戴冠式が行われるウェストミンスター寺院(the Abbey)
ロンドンの公共の場所には、郵便ポストなど、いたるところにE・R・Ⅱという表示があります。これはエリザベスのE、女王を意味するラテン語のレギーナのR、2世を表すⅡの略字ですが、その女王は2022年9月8日、療養されていたスコットランドのバルモラル城で静かに息を引き取られました。
そしてエリザベス女王の棺はロンドンに移され、ウェストミンスター寺院にて9月19日、国葬が執り行われましたが、そこは1947年に女王がエディンバラ公フィリップ殿下との結婚式、そして1953年には女王の戴冠式が執り行われた場所でもあります。
国葬の後、女王の棺はウェストミンスター寺院からロンドン郊外のウィンザー城へ運ばれ、同城内の聖ジョージ礼拝堂での埋葬式の後、近親者のみの礼拝を経て、同礼拝堂内にある国王ジョージ6世記念礼拝堂に納められます。
ウェストミンスター寺院は11世紀にエドワード懺悔王が修道院として建設し、1066年以降、英国国王戴冠式などの王室行事が挙行され、内部の壁と床には歴代の王や女王が埋葬されていますが、ニュートンやダーゥィンも眠ってます。
当初は重厚なロマネスク様式でしたが、幾度も改築を重ねた結果、13世紀には世界でも有数のゴシック建築となり、ローマ・カトリックのウェストミンスター大聖堂(カテドラル)に対し、こちらは英国国教会の格式ある僧院「the Abbey(アビー)」です。ゴシック風の高いアーチ型の天井は見上げるほどで、美しいステンドグラスは、ドイツ軍の爆撃から守るために疎開させていたと言われています。
アビーの意味とザ・ビートルズの「アビー・ロード」
日本語ではウエストミンスター寺院 と訳されていますが、 Abbeyとは「僧侶(修道士)や尼僧(修道女)が住む、または住んでいた建物」の意味で、Westminster Abbey はいわゆる「修道院」と言う事になります。とは言え、日本の「寺院」も僧尼が修行し、また居住する建物および場所を指す言葉ですから間違いではありません。
しかし、ビートルズファンの私にとっては、「ザ・ビートルズ」が数多くの名曲を生み出したレコーディング・スタジオ Abbey Road Studio の由来も気になりました。なぜならザ・ビートルズのアルバム「アビーロード」の最後の曲は「ハー・マジェスティ Her Majesty(女王)」だったからです。偶然にしては出来過ぎなので調べてみると、Abbey Roadには名前の由来となった Kilburn Prioryと呼ばれた小さな僧院Abbeyがありましたが、1537年に英国国教会を創始したヘンリー8世によって解散させられたようです。
「ウェストミンスター寺院」は、英王室のウイリアム王子とキャサリン・ミドルトンさんの結婚式でより一層有名になった寺院ですが、英国の英雄ウィンストン・チャーチルもエリザベス女王同様にここで国葬が執り行われています。
しかし、ウィンストン・チャーチルの挙式は、ウェストミンスター寺院と同じ敷地内にあり、フランドル製ステンドグラスで有名な聖マーガレット教会で行われました。
国会議事堂としてのウェストミンスター宮殿と時計塔(ビッグ・ベン)
一方、道路を挟んで東側に建つウェストミンスター宮殿は、議会制民主主義誕生の舞台となった建物で、現在、国会議事堂として使用されていますが、併設されている時計塔(ビッグ・ベン)とともにロンドンのランドマークとなっています。
ビッグ・ベンは正式名をクロック・タワーと言いますが、エリザベス2世の在位60周年を記念して「エリザベス・タワー」に改名されました。時計の文字盤は宮殿の内装を手がけたピュージンによるもので、盤の下には「主よ、われらが女王ヴィクトリアにご加護を」とラテン語で刻まれています。
ビッグ・ベンの鐘はできてすぐにひびが入ってしまい、そのため修繕しましたが、このひびが鐘の音色を独特なものにしたのです。この音は「ウエストミンスターの鐘」と呼ばれ、日本の学校で使用されている始業時・終業時のチャイムの音(音階)は、このビッグ・ベンの隣にある4つの鐘が奏でるメロディが元となっています。
私はこのチャイムの由来を、ビッグ・ベンの正式名とともに昭和50年、エリザベス女王がイギリスの君主として初めて日本を訪問されたときに知りました。あれから47年、エリザベス女王のように96歳まで生きる人は、長寿大国となった日本では珍しくありませんが、亡くなる直前まで自分で歩けるほど元気な人はそれほど多くはありません。
女王は9月6日、新しい党首に就任したトラス氏をバルモラル城に迎え、にこやかに握手を交わされていましたが、死の2日前まで笑顔で公務をこなし、最後まで尊厳を失わなかった女王の姿は、永遠に英国国民の誇りであると同時に我が国の政治家にも見習って欲しいと思いました。
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「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。