日本初の世界自然遺産「東洋のガラパゴス」と呼ばれる屋久島
私は現在、世界遺産や日本遺産関係の講演会では「エコツアー」について提唱しています。
日本遺産とは、世界遺産登録や文化財指定とは異なり、既存の文化財を価値付けするのではなく、地域に点在する遺産を「面」として活用し、我が国の文化や伝統をストーリーとして伝えることを目的とした文化庁の認定事業です。
そして「エコツアー」とは、自然や文化への影響を最小限に抑え、ありのままの自然を楽しみながら体験・体感する学びの旅です。
一般的な観光旅行ではどこかに行って何かを見ることが主体で、観光地と自然との繋がりやストーリーが見えてきません。
そこで、今回は日本で最初に世界自然遺産として登録された屋久島を例にエコツアーの楽しみ方をご紹介します。
屋久島は神秘的な森や透明度の高い海、綺麗な水の川など、豊かな自然がいっぱいの魅力的な島ですが、ほとんどの屋久島観光ツアーでは、往復飛行機利用で屋久島の縄文杉へのトレッキングが主体となっています。
しかし、屋久島の自然を理解するには、行きは航空便利用でも帰りは南西諸島沿いに東シナ海を北上する黒潮の流れに乗った船旅をお勧めします。
「ひと月に35日雨が降る」という環境も暖かい黒潮暖流の海水が蒸発し、屋久島の最高峰「宮之浦岳」で代表される高い山々の上空で冷やされて雲になっていることから納得できます。また、飛行機で近づくと青い海にできた緑の山塊、人呼んで「洋上アルプス」の実態も観察できます。
屋久島の象徴「縄文杉」と白谷雲水峡
九州最南端から約70kmの南沖合に浮かぶ屋久島は、花崗岩が隆起してできた島で、海岸線から山頂にかけて標高が上がるごとに亜熱帯から亜寒帯まで植生が移り変わるという、植物の垂直分布がこの島の特徴です。そしてこの山塊は大きく照葉樹林帯(標高1000mまで)とスギ樹林帯(標高750m~1800m)に分けられ、屋久島の象徴「縄文杉」は、日本百名山のひとつでもある宮之浦岳への途中にある高塚山に立っています。
幹の模様が縄文土器に似ていることから名付けられた樹齢2000年とも言われる縄文杉は、「森の王」というより、天変地異のすべてを見てきた修行を積んだ老師と呼ぶにふさわしい存在です。花崗岩からなる栄養分の少ない地表では、杉はゆっくり成長し、多雨地域の湿度の高さも手伝って目が詰まった樹脂を多く蓄えますが、樹脂には抗菌、防虫作用があるために、湿度の高い環境でも腐りにくく、永い樹齢を保つことができたのです。
この「縄文杉」へのトレッキングコースは往復10時間という長い道のりですが、道中の風景も素晴らしく、頑張る価値は十分で、私は数千年を生き抜いた自然の偉大さに、ただただ感動しました。この屋久杉がつくっている森林景観は、日本の自然遺産の中で唯一、自然美を評価する登録基準「ひときわ優れた自然美や美的重要性をもつ、類まれな自然現象や地域」が認めれれています。
しかし、ここまで来たら、やはりキャンプで1泊し、鳥のさえずりや沢のせせらぎをBGMに満点の星空を眺める森林浴を楽しむべきかと思います。特に「もののけ姫の」を連想させる苔むす白谷雲水峡はマイナスイオンが多く、ストレス解消には最適の場所です。
屋久島は花崗岩の隆起によってできた島で、この花崗岩は水をろ過するので、島内の水は飲めるだけでなく、喉を通るときに身が清められる感じがします。
また、屋久島の魅力は縄文杉や原生林、湧き水だけではなく、ヤクシカやヤクザルなどの固有亜種を含む多くの動物が生息しており、ウミガメの産卵地としても知られる「永田いなか浜」のような澄んだ海にも輝く命の営みが受け継がれているところです。
すなわち、「人」も「文化」もすべて「自然」で繋がっており、見えているものがすべてではないという黒潮文化のストーリーを学ぶのが屋久島エコツアーの醍醐味です。
祝!日本の縄文文化「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産登録
「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されたことを記念して、私はみちのくを旅した芭蕉の研究本『松尾芭蕉の旅に学ぶ』と共に『縄文人からのメッセージ』というタイトルで縄文文化を語り、平成芭蕉の『令和の旅指南』シリーズ(Kindle電子本)として出版しました。人生100歳時代を楽しく旅するために縄文人の精神世界に触れていただければ幸いです。
また、日本人の心に灯をつける『日本遺産の教科書』、長生きして人生を楽しむための指南書『人生は旅行が9割』、感情の老化を防ぐ私の旅日記である『生まれ変わりの一人旅』とともにご一読下さい。
★平成芭蕉ブックス
①『人生は旅行が9割 令和の旅指南Ⅰ』: 長生きして人生を楽しむために 旅行の質が人生を決める
②『縄文人からのメッセージ 令和の旅指南Ⅱ』: 縄文人の精神世界に触れる 日本遺産と世界遺産の旅
③『松尾芭蕉の旅に学ぶ 令和の旅指南Ⅲ』:芭蕉に学ぶテーマ旅 「奥の深い細道」の旅
④『生まれ変わりの一人旅 令和の旅指南Ⅳ』: 感動を味わう一人旅のススメ
⑤『日本遺産の教科書 令和の旅指南』: 日本人の心に灯をつける 日本遺産ストーリーの旅
★関連記事:平成芭蕉の旅のアドバイス「旅して幸せになる~令和の旅」
私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。