日本遺産の宮城県塩竃神社を詣でる『奥の深い細道』 | 【黒田尚嗣】芭蕉さんの旅講座




平成芭蕉の旅語録

日本遺産の宮城県塩竃神社を詣でる『奥の深い細道』

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奥州藤原氏が崇敬した塩竃神社(宮城県)を詣でる「奥の深い細道」の旅

芭蕉さんの『おくのほそ道』から平成芭蕉の『奥の深い細道』へ

『奥の細道』に登場する塩竃神社

『おくのほそ道』は俳句を愛する人々の聖典の一つですが、旅を愛する者にとっても貴重な紀行文の一つです。

松尾芭蕉は旅行業界にとっても模範とすべき存在であり、『おくのほそ道』という旅行記を残してくれたおかげで、後世のわれわれは、その旅を追体験する楽しみを得ることができるのです。

よって、私も芭蕉さんの『おくのほそ道』を参考に、平成芭蕉を名乗り、『奥の深い細道』の取材を兼ねて記録を残す旅を心がけています。

今回はその芭蕉さんが訪れた塩竃で地元のガイドさんと交流する機会を得て、その日本遺産ガイド研修会終了後、私も芭蕉さんが詣でた塩竃神社を参拝しました。

『おくのほそ道』には

「早朝、塩竃の明神に詣づ。国守再興せられて、宮柱ふとしく、彩槇(さいてん)きらびやかに、石の階(きざはし)九仭(きゅうじん)に重なり、朝日朱(あけ)の玉垣をかかやかす」

とあり、芭蕉さんは陸奥の一宮である塩竃神社を詣で、表参道の202段の急な石段を「石の階、九仭に重なり」と表現しています。

「仭(じん)」とは古代中国の高さの単位で「九仭」とは非常に高いという意味です。

国守である藩主伊達政宗公が再建しただけあって、社殿の宮柱はとても太く、垂木(槇)も彩色されていて美しいと芭蕉さんは感嘆しています。

この神社の祭神は日本神話に登場するシオツチノヲジ(塩竃明神)で、人々に漁業製塩法を教えたとされていますが、日本書紀の記述ではこの神が東に良い土地があると言ったことから神武天皇が東征を決意したとも言われています。

宮城県の日本遺産「政宗公が育んだ”伊達”な文化」の生きる塩竃神社

和泉三郎が寄進した神灯

塩竃神社は伊達政宗以降、伊達家の熱い崇敬を受け、歴代藩主が神社の大神主として祭事を司ったことから、日本遺産「政宗が育んだ”伊達”な文化」の構成文化財でもあります。

中世においては陸奥国を支配した奥州藤原氏が崇敬しており、神前の灯籠は文治3(1187)年、源義経を平泉にかくまった藤原秀衡の三男、藤原忠衡(和泉三郎)が寄進したものです。

塩竃詣でで特に芭蕉さんの心を打ったのは、この「文治神灯」と呼ばれる灯籠を寄進した和泉三郎(いずみのさぶろう)の生き様で

「五百年来の俤(おもかげ)、今目の前に浮かびて、そぞろに珍し。かれは勇義忠孝の士なり。佳名今に至りて慕はずといふことなし」

と称賛しています。

文治3年に藤原秀衡が急逝した後、次男の泰衡は源頼朝に逆らえず、義経の敵となりますが、三男の忠衡(和泉三郎)は父秀衡の意思を継いで最後まで忠義を尽くし、義経を守るも義経が自刃した約2か月後に泰衡に攻め殺されてしまいました。

芭蕉さんが敬愛した和泉三郎と父の教え

芭蕉さんは源義経を深く思慕しており、義経が最後を遂げた平泉までわずかとなった塩竃の地で、この和泉三郎が寄進した記念灯籠を目の当たりにし、感慨深くなったのだと思います。

また、これほどまでに和泉三郎を意識したのは、前夜、塩竃で義経主従の悲劇を語ったであろう琵琶法師の「奥浄瑠璃」を聞いたからかも知れません。

私もこの灯籠を見ていると和泉三郎が義経の無事と平泉の平穏を塩竃明神に懇願していたように感じられます。

私の父もこの和泉三郎のことを慕っていたようで、幼少の頃、私の愛犬であった秋田犬に「泉三郎」と名付けました。

当時の私は和泉三郎のことは知らず、犬に対しては血統書にある「泉三郎」とは呼ばずに「サリー」と呼んでいました。

今にして思えば、父も芭蕉さんと同様に和泉三郎を見習って

「人よく道を勤め、義を守るべし、名もまたこれに従ふ」

と私に言い聞かせたかったのかもしれません。

私の『奥の深い細道』は、かように旅を通じて歴史を考察する旅でもあります。

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