鉄のルーツを探る!日本遺産「出雲國たたら風土記」 | 【黒田尚嗣】平成芭蕉の旅物語

令和の「平成芭蕉」

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平成芭蕉の日本遺産

鉄のルーツを探る!日本遺産「出雲國たたら風土記」

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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って日本遺産を旅しています。

平成芭蕉の日本遺産

平成芭蕉の日本遺産

この「平成芭蕉の日本遺産」は、単なる日本遺産登録地の紹介や旅情報の提供ではなく、「平成芭蕉」を自称する私が、実際に現地を訪れて、地元の人と交流し、私が感じたことや認定されたストーリーに対する私自身の所見を述べた記録です。

*「平成芭蕉の旅物語」サイトマップ参照

島根県の日本遺産「出雲國たたら風土記」~神話の故郷は鉄の国

安来の観光と言えば足立美術館月山富田城が主流ですが、島根県の歴史を思えば、出雲風土記や古事記に記された出雲神話の世界は忘れてはならないでしょう。すなわち、出雲神話にも登場する八岐大蛇(ヤマタノオロチ)と斐伊川に息づいてきた鉄の文化です。

そこで、私はかねてより関心のあった「泊まれる博物館」として知られる奥出雲多根自然博物館を拠点に鉄の聖地を訪ねました。

奥出雲町の「泊まれる博物館」

この宿泊施設は「メガネの三城」創業者多根良尾氏の出生地に立てられたミュージアムで、2代目の多根裕詞氏の化石コレクションをベースにした自然史博物館であり、宿泊者限定のナイトミュージアムも楽しむことができます。

ナイトミュージアム

図鑑に載っていた恐竜の化石を間近で見られるだけでなく、大小様々な恐竜も展示されており、まさに恐竜博物館とも言えます。また、生命の歴史を探究した古生物学者の小畠郁生氏の展示コーナーもあって、丸一日見学しても飽きない展示内容です。

ナイトミュージアム

今回は宇田川館長直々に館内をご案内いただき、学生時代に学んだ人類学や生物学の講義内容を思い出すきっかけとなりました。

恐竜博物館の宇田川館長

地球の歴史を学んだ後は、いよいよ奥出雲の「鉄づくり千年物語」の旅に出発です。日本遺産に認定された「出雲國たたら風土記 」の世界ですが、奥出雲では、約1400年前から「たたら製鉄」と呼ばれる砂鉄と木炭を用いる鉄づくりが盛んでした。

鉄づくり千年物語

そして、この奥出雲の大地では、鉄づくりの原料となる砂鉄を得るため、砂鉄を含む山を切り崩して水流に流し、比重を利用して選り分けて採取する「鉄穴(かんな)流し」が行われていました。しかし、その跡地は放置されることなく広大な棚田として再生され、美味しい仁多米(にたまい)の産地であるこの奥出雲の豊潤な棚田は、砂鉄を採るために切り崩した山の跡地だったのです。

たたら製鉄に関する展示

また、その棚田の中には、鉄穴流しの際に、鎮守の杜や墓地など神聖な場所は削らずに残した小山があちらこちらに残っており、鉱山開発にあたっても信仰を守り続けた先人の心を伝えています。また、木炭を得るため森林は大規模に伐採されましたが、森林を伐りつくさないよう約30年周期の輪伐を繰り返し、循環利用されたと言われています。

この「たたら製鉄」が盛んだった江戸時代、松江藩には絲原、櫻井、田部家という「鉄師御三家」と呼ばれる製鉄業の中心的存在があり、藩の財政を支えただけでなく、風雅を愛した松平不昧公の頃には文化拠点にもなっていました。

鉄師御三家の絲原家

まず訪れたのは大谷の絲原(いとはら)家で、16代の絲原丈嗣さんに記念館を案内していただきました。往時を彷彿させる館は国重要文化財に指定されており、藩主の本陣として利用された客殿棟と広大な客間を持つ母屋だけでなく、池泉回遊式の出雲流庭園も見事です。

絲原家16代絲原丈嗣氏

番頭や手代職人の住居や砂鉄採取の跡地を林間散策路として整備した「洗心乃路」は、紅葉の季節には見物客で賑わうそうです。

次に訪れた屋号を「可部屋(かべや)」と称した櫻井家は、松平不昧公ご来訪の折、6代当主が造らせた日本庭園「岩浪(がんろう)の庭」が有名です。

日本庭園「岩浪(がんろう)の庭」

可部屋集成館にはたたら関連資料だけでなく、櫻井家の美術工芸品や松平藩主の調度品も展示されています。

櫻井家の可部屋集成館

「鉄の歴史村」を標榜する雲南市吉田町は、田部家を中心に発展し、整然と並ぶ白壁の土蔵群は、往時の威光を伝え、有力者が暮らした石畳が敷かれた本町通り、鉄の加工場や職人の長屋などが機能的に配置されています。

雲南市吉田町の田部家土蔵群

この吉田川沿いに開けた田部家の企業城下町は、山側には寺社が点在しており、その北に生産拠点であった菅谷たたらが位置しています。この菅谷たたら高殿は、日本で唯一残るものとして国の重要有形民俗文化財に指定されており、押立(おしたて)柱4本を軸とする広い空間の中央には土で炉が築かれています。

菅谷たたら高殿の内部

かつてこの地はたたらに従事する人々の長屋なども立ち並び、まさに映画『もののけ姫』の中に登場する「たたら」の山内を形成していました。また、近くには、「製鉄の神」金屋子神が降臨したと伝わる桂の木も立っています。

菅谷たたら高殿と桂の大木

安来への帰路、昼食は松本清張原作の映画『砂の器』で一躍有名になった亀嵩駅(かめだけえき)のそば屋で食べました。

『砂の器』で知られる亀嵩駅

亀嵩駅は、島根県仁多郡奥出雲町郡にある、JR西日本の木次線の駅で「少彦名命」(すくなひこなのみこと)という愛称で親しまれています。ここでは、ラッキーなことに8月21日から運転を再開したの写真も撮ることができました。

トロッコ列車「奥出雲おろち号」

今回は奥出雲、雲南市の「鉄づくり千年が生んだ物語」を訪ねましたが、この出雲風土記に語られた神話のふるさとは、人と自然が融合した熱い「鉄の国」だったのです。

出雲國たたら風土記~鉄づくり千年が生んだ物語~

日本遺産ストーリー〔島根県:安来市、雲南市、奥出雲町〕

日本古来の鉄づくり「たたら製鉄」で繁栄した出雲の地では、今日もなお世界で唯一たたら製鉄の炎が燃え続けています。

たたら製鉄は、優れた鉄の生産だけでなく、原料砂鉄の採取跡地を広大な稲田に再生し、燃料の木炭山林を永続的に循環利用するという、人と自然とが共生する持続可能な産業として日本社会を支えてきました。

また、鉄の流通は全国各地の文物をもたらし、都のような華やかな地域文化をも育みました。

今もこの地は、神代の時代から先人たちが刻んできた鉄づくり千年の物語が終わることなく紡がれています。

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