芭蕉さんの錬金術に学ぶ格安旅行術~職人として旅する
芭蕉さんはなぜ「仙台」でいい句を残さなかったのか

芭蕉さんの眠る義仲寺
私は、芭蕉さんは俳人でありながら格安旅行の達人であると考えていますが、これは俳句を詠むという職人芸を披露しながら旅をして、旅先で俳句を愛する仲間に世話になることが上手であったということです。
すなわち、旅先で暖かく歓迎され、現地の人にお世話になれる人が旅の達人で、その有力な武器が「技」や「芸」なのです。
私は「おくの細道」のツアーを企画する際、芭蕉さんの足跡を訪ねて、旧街道の残っているところは出来るだけ歩いて芭蕉さんの気持ちになって旅してみました。
そして気がついたことは、芭蕉さんは日光街道、奥州街道、羽州街道、北国街道など、各地ですばらしい句を残していますが、不思議なことに伊達藩の仙台ではいい俳句は詠んでいません。
なぜだろうといろいろ考えてみましたが、その理由は仙台においては芭蕉さんを迎えて、句会を開いてくれる人がいなかったからだと思います。
あてにしていた人はいたかもしれませんが、あいにく留守であったのか、泊めてくれる人もいなかった様子で、やむなく高い宿に泊まらざるを得ず、長居しても相手をしてくれる門人もいなかったことから、早々に仙台を旅立ったのだと思います。
伊達藩の城下町であり、大都会であった仙台ならば、本来、ゆっくり滞在して、多くの俳句を作っていたはずです。
実際、「おくの細道」のルート上の東北各地には、芭蕉さんの思い出が数多く残されており、芭蕉さんが詠んだ句碑も多く建てられ、今日でもそのその跡を訪ねる人が絶えません。
俳句は対話というダイアログの芸術
しかし、旅人の芭蕉さんと触れ合う人がいなかった仙台では、芭蕉さんらしい句が残されていないのです。
このことは、俳句が個人の独白的なモノローグではなく、対話というダイアログの芸術であることを示唆しています。
旅する俳人は、旅先で俳句を愛する仲間に迎えられて句を詠むのですが、俳聖松尾芭蕉も門人仲間にお世話になっていい句が詠めたのです。俳句とは旅先でお世話になる御礼の挨拶でもあったのでしょう。
芭蕉さんの旅は、俳句で通じ合える仲間を見つけていく旅でもあったわけですが、仙台ではその同好の仲間を見つけることができなかったのです。
芭蕉さんは俳句を詠むという技をもって日本を巡った旅の達人なのです。
芭蕉さんは旅を住処としましたが、俳句を詠む技があれば、どこに行っても人々に迎えられ、句会をひらいては旅費を稼げたのです。
しかし、仙台では俳句という同じものを共有できる仲間を探し出すことができず、句を残せないまま立ち去ったのでしょう。
芭蕉さんにとって俳句は、旅における人と人をつなぐコミュニケーションツールであり、この俳句という技(アート)を以て旅先の人を仲間というより門人とすることができたのです。
俳句という技で「西行」に出た芭蕉さん
芭蕉さんは西行法師の跡を追って旅をしていましたが、「旅をする職人」「渡り職人」のことをかつては「西行」と呼んでいました。
職人は、親方の下で修業を積んだ後、旅まわりをして腕をみがきましたが、これを「西行」に出るといったのです。
俳句に限らず、料理人や建築士のような職人は、芭蕉さんのようなコミュニケーション術があればきっとどこに行ってもやっていけるはずです。
旅をして珍しいものや見たことのない物に出会うのは、ある意味では当然であり、不思議なことでもありません。
むしろ同じものを見つけることの方が珍しく、難しいことだと思います。ここで私が言う「同じもの」とは、自分が知っているもの、親しんでいたもののことです。
旅において異文化に触れ、見知らぬ世界に入った際、それを理解するためには、自分と同じものや共通したものを探す必要があるのです。
そして、自分の知っていることや自分と自分と共通したことなどから未知の世界が見えてくるのです。
私にとって芭蕉さんの「おくの細道」が面白いのは、芭蕉さんが俳句という自分の技を通じて、みちのくの異文化を教えてくれているからです。
日本の縄文文化「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産!
「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されたことを記念して、私はみちのくを旅した芭蕉の研究本『松尾芭蕉の旅に学ぶ』と共に『縄文人からのメッセージ』というタイトルで縄文文化を語り、平成芭蕉の『令和の旅指南』シリーズ(Kindle電子本)として出版しました。人生100歳時代を楽しく旅するために縄文人の精神世界に触れていただければ幸いです。
また、日本人の心に灯をつける『日本遺産の教科書』、長生きして人生を楽しむための指南書『人生は旅行が9割』、感情の老化を防ぐ私の旅日記である『生まれ変わりの一人旅』とともにご一読下さい。
★平成芭蕉ブックス
①『人生は旅行が9割 令和の旅指南Ⅰ』: 長生きして人生を楽しむために 旅行の質が人生を決める
②『縄文人からのメッセージ 令和の旅指南Ⅱ』: 縄文人の精神世界に触れる 日本遺産と世界遺産の旅
③『松尾芭蕉の旅に学ぶ 令和の旅指南Ⅲ』:芭蕉に学ぶテーマ旅 「奥の深い細道」の旅
④『生まれ変わりの一人旅 令和の旅指南Ⅳ』: 感動を味わう一人旅のススメ
⑤『日本遺産の教科書 令和の旅指南』: 日本人の心に灯をつける 日本遺産ストーリーの旅

平成芭蕉「令和の旅指南」シリーズ
★関連記事:平成芭蕉の旅のアドバイス「旅して幸せになる~令和の旅」
私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って旅をしています。

平成芭蕉の旅行術
平成芭蕉は元禄時代に生きた俳聖松尾芭蕉の旅から学んだことをお伝えします。旅とは日常から離れ、いつもと違う風、光、臭いなど五感を通じて自分を見つめ直す機会です。そしていつもと違う人に会い、いつもと違う食事をとることで、考え方や感じ方が変わります。すなわち、いい旅をすると人も変わり、生き方も変わり、人生も変わるのです。

「令和の旅」へ挑む平成芭蕉