日本文化における「おもてなし」
2020年の東京オリンピック決定に際して滝川クリステルさんが「お・も・て・な・し」と紹介して以来、日本語の「おもてなし」は国際語となり、すっかり有名になりました。
この「もてなし」あるいは「もてなす」という日本語は古くからあり、『源氏物語』にも登場しています。
その意味は「教養、性格などによって醸し出される態度、身のこなし、ものごし」と「人に対する態度、人に対するふるまい方」の両方があり、さらに心と物の両面があります。
人が人をもてなす際には、一方的にもてなされる側が受益者になるのではなく、もてなす側ももてなす喜びを共有することができます。
すなわち「もてなし」とは、もてなす人ともてなされる人との関係性の間にある文化ですが、この「もてなし」を最も効果的に行った歴史上の人物は織田信長です。
岐阜における信長公のおもてなし
意外かもしれませんが、織田信長が自身の領地である岐阜で行ったのは、戦いではなく、文化の力で有力者たちを迎える、物心両面からの手厚い「おもてなし」だったのです。
堺の茶人、津田宗及(そうぎゅう)やイエズス会宣教師のルイス・フロイスなど、多くの有力者が信長公からのおもてなしを受けています。
巨大庭園を持つ迎賓館「山麓居館」や山上の岐阜城、そして金華山や長良川の美しい自然環境と眺望を活かした岐阜の各所で、信長公自らが案内や給仕をしたと伝わっています。
そして城下町での一番のおもてなしといえば、今日でも人気の高い長良川「鵜飼」でした。
信長公は、金華山などの自然と城下町が一体となった素晴らしい景観や鵜飼文化にその価値を見出し、軍事施設の城に「魅せる」という独創性を加え、おもてなしの文化を作ったのです。
そして信長公が形作った町並みや鵜飼文化が残る岐阜の地は、『「信長公のおもてなし」が息づく戦国城下町』として日本遺産にも登録されました。
琉球王国のおもてなしは「守礼の心」
日本遺産と言えば、令和元年に認定された沖縄県の『琉球王国時代から連綿と続く沖縄の伝統的な「琉球料理」と「泡盛」、そして「芸能」』もおもてなしの文化です。
沖縄はかつては琉球王国と呼ばれ、独自の文化を形成し、「守礼の邦=礼節を重んじる国」として、訪れる外国賓客をもてなすために「礼遇」を大切にしていた国でした。
特に中国皇帝から派遣された冊封使節団は、滞在期間が約半年間にも及び、宴は国を挙げての重要な行事で、そこで供された宮廷料理や御用酒泡盛、宴を盛り上げた芸能などは、今も沖縄の誇りとして県民に親しまれているのです。
この琉球王国時代に育まれた沖縄の食文化と芸能は、「世替わり」の歴史を反映しながらも、岐阜の信長公「おもてなし」と同様に、連綿と続く「守礼の心」で受け継がれています。
*平成芭蕉のテーマ旅行「もてなしの旅」は旅行読売2019年12月号に掲載されました
<具体的な旅先>
岐阜の長良川「鵜の庵 鵜」…鵜匠さんたちの家が連なる「鵜飼の里」にあり、伝統的な鵜飼を今に伝える山下鵜匠のおもてなしが受けられるアユ料理のお店です。
琉球料理「首里天楼」…沖縄のメインストリート那覇国際通りにあり、琉球宮廷料理と琉球舞踊が堪能できる料亭で、琉球王国のおもてなし文化を体感できます。
日本の縄文文化「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産!
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