日本木造城郭建築の最高傑作「白鷺城」と呼ばれる姫路城
白漆喰の総塗籠(そうぬりごめ)の外壁で、まぶしいばかりに白く、シラサギが羽を広げたような優美な姿から別名白鷺城(はくろじょう・しらさぎじょう)とも呼ばれる姫路城は、日本の木造建築物の最高傑作であり、白漆喰の城壁を持つ美しい明治以前の封建制社会の象徴として、1993年12月、法隆寺とともに日本で最初の世界文化遺産に指定されました。
姫路城は1333年に赤松則村が姫山に築いた砦を起源とし、16世紀末に羽柴秀吉がこの城を毛利氏攻略の拠点に定めて、新たに3層の天守閣を建設、そして関ケ原の戦いの後、城主となった池田輝政が9年間にも及ぶ大改修を行い、姫路城の象徴である外観5層の大天守を中心とする天守群を築きました。また、続く本多忠政の時代には、長男の忠刻(ただとき)とその妻の千姫(せんひめ)が居住した西の丸も整備されました。
しかし、池田輝政による5層7階建ての大天守は創建当時のままの姿で残っていますが、西の丸の御殿は現存せず、千姫が男山の天満宮を遥拝する際に化粧を直した「化粧櫓」や長局(百間廊下)だけが残っています。
姫路城がなぜ白いかと言えば、戦国時代の終わりを予感した池田輝政が、これからは「武力による統治」から「美による威嚇」の時代になると考え、城主としての威厳を「美」に託して「まぶしいばかりの白」にしたのではないかと言われています。
その一方で、この城は極めて実用的かつ堅牢な城でもあり、らせん状に構築された複雑で巧妙な縄張り、姫山と呼ばれる自然の丘の地形を生かした曲輪や堀、数か所に設けられた櫓(やぐら)や門などによって、高い防衛機能を備えています。
この「白鷲城」は、城主の新しい時代への思いも込められ、鮮やかな白の城壁や5層7階の大天守と東、西、乾の小天守(こてんしゅ)が渡櫓(わたりやぐら)で連結された連立式天守が特徴ですが、城門や櫓が多数現存しており、江戸時代以前に建設された現存12天守のひとつとして、大天守と小天守を含む計8棟が国宝に指定されています。
しかし、姫路城は天守だけでなく石垣も含めた全体が特別史跡に指定されており、角には四角に整えられた大きな石が使われていますが、これは周辺にあった古墳の石棺(せっかん)です。
戦いに巻き込まれなかった「不戦の城」姫路城は「和」のシンボル
世界遺産の姫路城は、幕末に新政府軍に包囲され、第二次世界大戦では焼夷弾が直撃するも、築城以来、一度も甚大な被害を被らなかったことから「不戦の城」とも呼ばれています。
戦乱の世を潜り抜け、1615年の一国一城令、明治維新での廃城令も免れ、何度も拡張工事を行いながら立派な天守へと生まれ変わり、空襲をも免れた運のいいお城と言えるかもしれません。また、近年、大天守の屋根瓦や漆喰壁の保存修理が行われましたが、修復を行いながら「真正性」を保つという取り組み方も評価されました。
しかし、私はこの城を「和」の象徴と考えます。なぜなら、姫路城は黒田官兵衛から中国地方の攻略を任された羽柴秀吉に献じ譲られ、関ケ原の合戦後は功のあった池田輝政、大阪の陣の後は武功が認められた本多忠政、そして本多家以降は榊原家や酒井家、松平家といった徳川家譜代の大名が姫路城に入城して西国大名へ睨みを効かせており、幕末まで城での攻防はなかったからです。
すなわち、姫路城は何代にもわたって城主が変わるも700年以上の歴史を持つ偉大なお城で、瓦に様々な家紋が見られるのはこれら歴代城主のものです。
世界遺産姫路城の物語は日本遺産にも通じる
また、姫路城は建造物としての魅力もさることながら、数々の物語もあり、毎年、8月9、10日に行われる「お夏清十郎供養まつり」の主人公お夏の物語、聡明で美しい姫といわれた徳川家康の孫娘の千姫物語や、城内の刑部(おさかべ)神社にまつわる宮本武蔵の妖怪退治など、多くの物語の舞台となった魅力あふれる城です。
「物語」と言えば、姫路は文化庁が認定する日本遺産「播但貫く、銀の馬車道 鉱石の道~資源大国日本の記憶をたどる73kmの轍~」の起点にもなっています。
この日本遺産ストーリーにおける「銀の馬車道」は、明治時代、朝来市にある生野銀山の銀を姫路の飾磨港まで運んだ馬車道で、日本最古の産業高速道路ですが、道中には姫路城の妖怪伝説に因んだ妖怪の町、柳田國男先生の出身地である福崎町もあります。
すなわち、姫路城は世界遺産としての価値も十分ですが、魅力ある物語の多さから、日本遺産としても注目すべき城かと思います。
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。