フランスの世界遺産 フランス財政を支えた白い黄金「塩」の街
「サラン・レ・バン大製塩所の煎熬塩の生産」
暑い毎日が続くと、熱中症予防のために水分補給の重要性がしばしば話題になりますが、熱中症が疑われる時は、ただ水分を補給するだけでなく、塩分も一緒に補給することが重要です。
なぜなら、発汗により失われるのは水分だけでなく体内の塩分やミネラルも奪われているからです。
即ち、人が生きていく上で塩は非常に重要なもので、古代ローマでも塩Saltはお金として扱われており、給料Salaryの語源にもなりました。
そこで今回は私たちの生活に欠かせない塩がいかにして作られていたかをフランスとスイスの国境近くにある世界遺産「サラン・レ・バンの大製塩所とアル・ケ・スナン王立製塩所」からご紹介します。
今日のように冷蔵庫がない時代、フランスでは食料を保存するための材料として塩が重宝され、塩は「白い黄金」と呼ばれて、それに課税される塩税(ガベル)はフランス王国の主要な財源で、その管理は国が直接行っていました。
そのため、「サラン・レ・バンの大製塩所」は高い壁に囲まれ、塩が盗まれないように設計されており、町もブラン砦とサンタンドレ砦により守られていました。
「サラン・レ・バンの大製塩所」はアモンの井戸と呼ばれる塩井に建設された製塩施設で、地下からくみ出した塩水を釜で煮詰めて煎熬(せんごう)塩を作っていました。その設備は今も残されており、塩水を煮ていた大きな釜や煙をもくもくとはいていた高い煙突、大貯蔵庫など巨大な設備を見ることができます。
「製塩」には、太陽熱や風を利用して塩田の水分を蒸発させる「天日(てんぴ)製塩」と、塩水を金属の釜で熱して塩を生産する「煎熬(せんごう)製塩」の2種類があり、「サラン・レ・バンの大製塩所」は「天日製塩施設」として世界遺産に登録されていますが、実際には「煎熬製塩施設」です。
「アル・ケ・スナンの王立製塩所」と都市計画
塩を大量生産するべくフル稼働していたサラン・レ・バンの大製塩所でしたが、塩の需要増大に伴い、釜の加熱に不可欠な薪の調達が周辺では困難となったため、新たに約21㎞離れたショーの森の近くに製塩所を建設することになりました。その時に建築された製塩所が、1982年に世界遺産登録された「アル・ケ・スナンの王立製塩所」です。
「アル=ケ=スナンの王立製塩所」は、1775年、クロード・ニコr・ルドゥーの設計によって、製塩所としてだけでなく都市計画の一つとして建設された施設で、まるで宮殿のような造りになっており、敷地内には研究所や住居、浴場など様々な施設が備わっているほか、緑豊かな大きな庭園もあります。ルドゥーは円形に建造物を配置することで労働組織の効率化を目指したのです。
半円形の状態で未完成のままとなりましたが、理想的工業都市実現への大きな試みとして評価されました。建物が整然と半円状に建ち並ぶ様子は、フランスの現代建築でもなかなか見られない光景で、建物のいくつかは展示館となっており、当時の製塩の様子や都市計画の設計図も見ることができます。
このアル・ケ・スナン王立製塩所が世界遺産登録された理由は、ルイ16世の治世下で、啓蒙思想を取り入れ、監督者と労働者の効率的な生活が営める産業都市を具現しており、その後の産業建築の模範となったからです。
フランス革命の影響で、設計者である建築家クロード・ニコラ・ルドゥーの当初の予定通りにはなりませんでしたが、製塩所や事務所、所長や従業員の住宅と庭園などが半放射状に配置された設計は見事で、当時の住居は今日、ホテルの宿泊施設として開放されています。
また、サラン・レ・バンでは塩水を利用したリハビリ施設が人気を呼んでおり、現代においてもこの地の塩はフランス国家に利益をもたらしています。
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★関連記事:平成芭蕉の旅のアドバイス「旅して幸せになる~令和の旅」
私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。