メキシコの世界遺産 黒曜石の交易で栄えた古代都市テオティワカン
長野、山梨両県にまたがる八ヶ岳周辺で採取された黒曜石は、矢じりの材料として日本各地にもたらされましたが、霧ヶ峰南麓にある「駒形遺跡」は、その黒曜石の石器製作と交易に関する縄文時代の集落遺跡で、日本遺産の構成文化財になっています。
一方、メキシコ中部のアナワク高原に位置する世界遺産「テオティワカンの古代都市」でも黒曜石の加工所が数多く発見されており、この都市はその黒曜石の交易を独占して栄えていました。
すなわち、日本の縄文時代と同様、メソアメリカ文明にとっても石器の利用は不可欠であり、黒曜石は調理用具、武器あるいは宝石として重宝され、その黒曜石を産出する地をおさえたことで、テオティワカンは莫大な富を集めて繁栄したと考えられています。
テオティワカンは、紀元前2世紀から6世紀までの間に存在した、当時のアメリカ大陸では最大規模を誇った宗教都市で、14世紀にこの遺跡を発見したアステカの人々は、あまりのスケールの大きさにこれが人の手によるものだとは信じられず、「神が集う場所=テオティワカン」と命名したと言われています。
発掘調査は1884年から行われていても、まだ全体の10分の1程度しか発掘されていませんが、学者によると紀元前200年前後から周辺の小集落が統合されはじめ、4~7世紀頃には人口15万人を超える大都市になったと考えられています。
メソアメリカにおける都市は、通常長い年月をかけて次第に都市として整備されていくのが普通ですが、テオティワカンは、当初に設計された計画に従って、中央の大通りから、その左右に神殿などのピラミッド建造物が次々と建設され、わずか百数十年の間に20万平方キロメートルにも及ぶ壮大な都市が完成しています。
すなわち遺跡は、南北四キロにわたって走る「死者の大通り」沿いに、「太陽のピラミッド」「月のピラミッド」「ラ・シウタデラ(城塞)」といった巨大なピラミッドや神殿群が立ち並び、「死者の大通り」のちょうど中間地点にある城塞の中にケツァルコアトル神殿(羽毛のあるヘビの神殿)が配されています。
ケツァルコアトルの神殿は、ラ・シウタデラ(城塞)と呼ばれる儀式場跡のほぼ中央にいちしており、このエリアにある遺跡の中で三番目に大きく、そして最も美しいピラミッドで、羽毛の生えたヘビ「ケツァルコアトル」(創造と科学の神、地中の時の支配者)や、「トラロック」(雨の女神)の彫刻・壁画がしっかり残っている唯一の建造物です。
かつてはタルー・タブレロ式(タルーと呼ばれる傾斜壁とタブレロと呼ばれる垂直壁を交互に積み上げる建築様式)で造られた600基のピラミッドや宮殿が整然と並んでいました。中でも世界で3番目に大きいピラミッドとしても知られる、高さ63m・底辺222m×225mの「太陽のピラミッド」はまさに圧巻ですが、儀礼などは「月のピラミッド」で行われており、テオティワカン遺跡にある建物の中で最も重要な役割を持つピラミッドだと言われています。
また「太陽のピラミッド」では、夏至の日にピラミッドの真向かいに太陽が沈むように設計されていることから、高度な天文知識をもつ民族だったとされています。
そして、この都市は王や貴族、神官の他に農民、商人などの一般の人々がともに住んでいたことが明らかになっており、他の都市とのきわだった違いを見せています。
また、遺跡からは多数の殉教者や生け贄を捧げる風習が存在した痕跡が発見されおり、古代メソアメリカにおいては「死ぬことは終わりではなく、常に生と死がつながりあって回転している」という古代人の祈りや宇宙観、宗教観も伝えてくれる遺跡です。
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。