フランスを代表する世界遺産 パリのセーヌ河岸
今日の美しいいパリ市街は、19世紀後半の第二帝政時に凱旋門を建てたナポレオンの甥であるルイ・ナポレオン(ナポレオン3世)が、ジョルジュ・オスマンをセーヌ県知事に任命し、その原型を作らせたものです。すなわち、コンコルド広場からシャンゼリゼ通り、そして凱旋門が立つエトワール広場までを見渡す景観が、エトワール広場を基点としてシャンゼリゼ通りなど放射状に延びる12本の道路とともに生まれたのです。
さらに1889年にはパリ万国博覧会のメイン・モニュメントとしてエッフェル塔が建造され、20世紀に入ってからは、グラン・パレやシャイヨー宮が建設されました。13世紀頃に築かれた要塞を起源とし、フランス国王の居城であったルーヴル宮は、現在「モナ・リザ」など30万点以上の展示を誇るルーブル美術館となり、また駅舎であったオルセー美術館も世界遺産の構成資産となっています。
しかし、今やパリはフランスの首都であるだけでなく、芸術、文化、ファッション、グルメ、さらには宗教的にも重要な都市になっているのです。
例えば、火災にあったノートル・ダム大聖堂は、天井を軽くするリブ・ヴォールトやステンドグラスなど、初期ゴシック様式の貴重な建物ですが、これはフランス社会の象徴であるだけでなく、ヨーロッパの顔でありヨーロッパ人の魂なのです。
ナポレオンの遺言で知られる「パリのセーヌ河岸」と凱旋門
2012年5月15日のパリのにおけるフランス大統領の交代式では、エトワールの凱旋門に大きなフランス国旗が掲げられ、かの皇帝ナポレオンが行進してきそうな雰囲気でした。
ナポレオンの命令で建設されましたが、この凱旋門の正式名称は「アルク・ド・トリオンフ・ド・レトワールArc de Triomphe de lEtoile」、すなわち戦勝記念碑で、下には第一次世界大戦で戦死した無名の兵士たちが眠っています。
そのナポレオン・ボナパルトは「余は、余がかくも愛したフランスの国民に囲まれ、セーヌ河のほとりに眠りたい」という遺言を残しています。
パリの発祥地とセーヌ河岸
世界遺産に登録された「パリのセーヌ河岸」は、正確にはセーヌ河のシュリー橋からイエナ橋までの約8kmで、この中にはセーヌ右岸・左岸に加えてパリの発祥地であるシテ島やサン・ルイ島も含まれます。この地は紀元前52年頃、カエサル率いるローマ軍に征服され、ルテティア・パリシオルムと名付けられ、シテ島とセーヌ河左岸にはローマ風の都市が築かれ、河川交通の要衝として発展、4世紀頃にパリと改名されたのです。
そして6世紀初頭にメロヴィング朝フランク王国、10世紀末にはカペー朝フランス王国の首都となってさらに発展しました。また、1248年に完成したサント・シャペルは、国王ルイ9世の命によるもので、礼拝堂の窓面にはキリスト受難の物語など1134の場面を描いたステンドグラスで知られていますが、1345年に完成したノートル・ダム大聖堂とともにゴシック様式の荘厳な建物が王都としての威厳を与え、右岸の整備も進んで商業の中心地としても発展していったのです。
しかし、1889年のパリ万博の目玉として建設されたエッフェル塔は、今でこそパリのシンボルですが、建設当時はあまりに奇抜であったために建設反対も多く、その代表であった文学者のモーパッサンはエッフェル塔1階のレストランによく通っていたそうです。
その理由として彼は「そこがパリの中でいまいましいエッフェル塔を見なくてすむ唯一の場所だから」と言い、この言葉から「エッフェル塔の嫌いなやつは、エッフェル塔に行け」ということわざも生まれました。
テーマのあるパリ観光
観光目的でパリを訪問する場合、パリの見所があまりにも多く、また内容も充実しているため、表面的な観光になりやすいので見学のテーマを設けることをお勧めします。
例えば皇帝ナポレオンゆかりの地というテーマを設け、彼の墓所であるアンヴァリッド(廃兵院)を訪ねながらフランス史におけるナポレオンの果たした役割を考えるのです。
ナポレオン自身もルーブル宮を改築したり、マドレーヌ寺院を建てたりしましたが、彼の甥であるルイ・ナポレオン(ナポレオン3世)もジョルジュ・オスマンをセーヌ県知事に任命し、今日のパリ市街の原型を作らせ、フランスの近代化に貢献しているのです。
世界遺産を楽しむコツ
世界遺産を楽しむコツは、例えばモンマルトルのシャンソニエを訪ねて、その地での時の流れを感じると共に、日本の文化と対比しつつ「歴史の何故」を追求し、現地の人とのコミュニケーションを図ることです。
また、最近はバスの乗り入れ規制もあり、団体ではノートル・ダム大聖堂に足を運ぶ機会も少ないようですが、パリジャンの誇りである「我らが貴婦人」聖母マリアを訪ねないでパリを去るのは、ここで戴冠式を行ったナポレオン皇帝に対しても失礼です。
この大聖堂内で行われるコンサートなど、様々な催し物に参加して現地の人との交流を図り、生きた文化に触れてこそセーヌ河岸の世界遺産の意義が理解できると思います。
祝!日本の縄文文化「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産登録
「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されたことを記念して、私はみちのくを旅した芭蕉の研究本『松尾芭蕉の旅に学ぶ』と共に『縄文人からのメッセージ』というタイトルで縄文文化を語り、平成芭蕉の『令和の旅指南』シリーズ(Kindle電子本)として出版しました。人生100歳時代を楽しく旅するために縄文人の精神世界に触れていただければ幸いです。
また、日本人の心に灯をつける『日本遺産の教科書』、長生きして人生を楽しむための指南書『人生は旅行が9割』、感情の老化を防ぐ私の旅日記である『生まれ変わりの一人旅』とともにご一読下さい。
★平成芭蕉ブックス
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②『縄文人からのメッセージ 令和の旅指南Ⅱ』: 縄文人の精神世界に触れる 日本遺産と世界遺産の旅
③『松尾芭蕉の旅に学ぶ 令和の旅指南Ⅲ』:芭蕉に学ぶテーマ旅 「奥の深い細道」の旅
④『生まれ変わりの一人旅 令和の旅指南Ⅳ』: 感動を味わう一人旅のススメ
⑤『日本遺産の教科書 令和の旅指南』: 日本人の心に灯をつける 日本遺産ストーリーの旅
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
世界遺産とは地球の成り立ちと人類の歴史によって生み出された全人類が共有すべき宝物で、その内容によって①文化遺産②自然遺産③複合遺産に分類されます。この「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。