「芭蕉さんに学ぶ」芭蕉さんの旅には強い信念が貫かれています

芭蕉さんの父の実家があった柘植
芭蕉さんは41歳のときに『野ざらし紀行』の旅に出てからは、元禄7年に51歳で亡くなるまでの10年間、ほとんど旅に出て俳句を詠むという旅を住処とする生活でした。
今日、私たちが親しむ芭蕉さんの名句と呼ばれるものの多くは、この10年間の旅を通して生まれたものです。
旅行が簡単にできる今と異なり、列車もバスもない300年も昔、何の用事もなくて旅に出ることは容易なことではなかったはずです。
交通手段は主に歩きでしたが、ところどころ舟に乗ったり、馬を利用したりはしています。
特に舟を利用するという考えは、芭蕉さんの出身地である伊賀上野や先祖の故郷である柘植付近に川が多く、水に慣れ親しんでいたからだと思われます。
また、芭蕉さんの旅の特徴として『奥の細道』における曽良のような芭蕉さんのお伴がいます。
当時の旅では同伴者はいた方がよかったと思いますが、長期間ずっと一緒だと通常は、夫婦でもトラブルが起きます。
芭蕉さんと曽良はどうだったのでしょうか?
黒羽にある像は、芭蕉さんが馬に乗って曽良はその横を歩いています。
その逆はなかったのでしょうか?
芭蕉さんと曽良の旅から「老人と少年」の話を考える

黒羽宿芭蕉像前の黒田尚嗣
私は黒羽の芭蕉像を見るたび「老人と少年」の話を思い出します。それは
少年がロバに乗り、老人がその横を歩いて街に向かっていました。
すると道中で、「年寄りが歩いて子供がロバに乗っているなんて恥ずかしい」という人たちがいました。
そこで、少年と老人はこの批判はもっともかもしれないと考え、今度は老人がロバに乗って少年が歩くことにしました。
しばらく進むと、また通りすがりの人が、「ひどいじゃないか! この老人は子供を歩かせているぞ」と言うので、老人もロバから下りて、二人とも歩くことに決めました。
するとすぐに誰かが、「ちゃんとした乗れるロバがいるのに二人して歩くなんてばかじゃないか」と言ったので、二人は一緒にロバに乗ることにしました。
しかし、今度はすれ違った人が、「小さなロバに二人で乗るなんてロバがかわいそうだ」と言いました。
少年と老人はそれもそうだということになって、ロバを担ぐことにしました。
そうして、ロバを担いて橋に差し掛かった時、二人はうっかりロバから手を離してしまい、ロバは川に落ちて溺れ死んでしまいました。
この話の教訓は何なんでしょうか?
それは、”全ての人の言うことを聞き入れたら、不幸になってしまうかもしれない”ということです。
その点、芭蕉さんはただ一点、風雅を求めて旅をしていたので、基本的に道中、人言うことや曽良の話は聞いても、その言葉には左右されなかったように思われます。
実際、『奥の細道』の記述は、お伴の『曽良旅日記』と比較すれば、芭蕉んさんのフィクションです。
信念で旅に生きた結果、「かるみ」を発見

義仲寺の芭蕉翁墓
しかし、この風雅をかたくなに追い求め、信念で旅して「かるみ」を発見したことから、芭蕉さんは俳聖となったのです。
私たちは、「人のために何ができるかを考えろ」と小学校の時からずっと教えられてきました。
しかし、大人になってみると何かが違うと気付き始めるのです…
人のためを思って行動し、幸せになる人もいますが、人のためを思って行動しても、幸せになれない人もいるのです。
仕事においては、みんな「人のために働きたい」と一生懸命です。
でも、その結果、自分が疲れ切ってヘトヘトになったり、全ての要望に応えようとして、余裕がなくなり、周囲にきつく当たったりします。
その点、芭蕉さんはすべての門人のことを思っていたのではなく、自分自身と自分を理解してくれる門人のことだけを考えていたので、お伴の曽良ともうまくつきあえたのです。
芭蕉さんは晩年、到達した俳諧の理念である「かるみ」を生まれ故郷の伊賀上野の門人に語りましたが、支持されませんでした。
しかし近江の門人たちにはこの「かるみ」を理解してもらえたのです。
それゆえ、芭蕉さんは故郷の伊賀上野にある松尾家祖先が眠る愛染院ではなく、近江大津市の義仲寺に眠っています。
芭蕉さんの信念は、故郷よりも自分を理解してくれる人のいる場所を永眠の地に選んだのです。
私は芭蕉さんの旅から、まずは自分が楽しんで満足しないと人を楽しませることはできないということを学びました。
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って旅をしています。

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平成芭蕉は元禄時代に生きた俳聖松尾芭蕉の旅から学んだことをお伝えします。旅とは日常から離れ、いつもと違う風、光、臭いなど五感を通じて自分を見つめ直す機会です。そしていつもと違う人に会い、いつもと違う食事をとることで、考え方や感じ方が変わります。すなわち、いい旅をすると人も変わり、生き方も変わり、人生も変わるのです。

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