フランスの世界遺産 「アルルの女」で有名な世界遺産
古代ローマ時代から中世にかけて繁栄したフランス南部プラヴァンス地方のアルルは、「ガリアのローマ」と呼ばれ、ローマ劇場などの遺跡と巡礼者でにぎわったロマネスク様式の教会が多く残っています。紀元前46年にカエサルによってローマの植民都市となると、ローヌ川河口と内陸部をつなぐ拠点として発展、また4世紀頃には初期キリスト教にとっても重要な都市となりました。
そのため、市内のサン・トロフィーム聖堂にはキリスト教の教えを伝えるため、扉の上の半円形のタンパンや柱頭などに、聖書の場面やイエス・キリストなど登場人物が彫られています。
しかし、一番のおすすめは毎年7月の第一日曜日に開かれる「アルル衣装祭」を主宰するアルルの女王で、これはまさしく現代の世界遺産です。
フランスの世界遺産「アルルのローマ遺跡」と「アルルの女」
ゴッホが愛した南仏プロヴァンスの町は「アルルの女」で有名
損保ジャパン東郷青児美術館に行き、1987年、オークションにて当時の世界最高額約53億円で購入されたというゴッホの「ひまわり」を鑑賞してきました。そこで今回はそのヴィンセント・ファン・ゴッホが愛した南仏プロヴァンスのアルルをご紹介したいと思います。
アルルは紀元前1世紀にカエサルが築いた植民都市以来の歴史があり、古代ローマ時代にはプロヴァンス屈指の大都市として栄え、フランス一大きい円形闘技場や1万人以上の観客を収容したという古代のローマ劇場、コンスタンティヌスの大浴場、サン・トロフィーム聖堂などの古代ロ-マ遺跡が世界遺産に登録されています。
特に、ロマネスク建築の傑作であるサン・トロフィーム聖堂は、中世にはサンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼路の南仏を通るトゥールーズの道の始点になっていたことから、巡礼者で賑わった12世紀当時の輝きを伝えています。教会ファサードの彫刻は綺麗に修復されており、ローマ時代の凱旋門を思わせる半円アーチ下のタンパンには「最後の審判」の彫刻が残っていますが、当時の巡礼者はこれを見て素朴な信仰心を奮い立たせたことでしょう。
紀元前90年頃に建設された円形闘技場は、中世には内部に家屋や教会が設けられ、要塞兼住居としても使用されましたが、2万人収容することができました。ローマ劇場には、今日「2人の未亡人」と呼ばれる2本の石柱や劇場の土台が残っていますが、ローマ衰退後は採石場になりました。また、コンスタンティヌスの大浴場には、湯の温度を調節する機能やサウナ部屋、床暖房措置まであったことがわかっています。
アルル衣装祭を主宰する「アルルの女王」
また、「南仏に行くならアルルにしろよ。あの町には美人が多いから」とロートレックがゴッホに語ったように民族衣装に身を包んだ「アルルの女」も魅力です。
特に毎年7月の第一日曜日に開かれる「アルル衣装祭」を主宰するアルルの女王は現代の世界遺産かと思います。なぜなら、アルルの女王はただ美しいだけではなく、華麗なプロヴァンス語を話し、乗馬もできる真にプロヴァンスを愛する女性でないとなれないからです。
ドーデの短編小説『アルルの女』を読み、ビゼーの戯曲を聞いてアルルの女王に会えば、主人公のフレデリが心を奪われた気持ちも理解できます。
南フランス豪農の息子フレデリはアルルの闘牛場で見かけた女性(アルルの女)に心を奪われるも、彼にはヴィヴェットという献身的で素敵な許嫁がいたのです。
ヴィヴェットはフレデリの幸せのためならと身を退くことを彼の母に伝えると、アルルの女に心を奪われていたフレデリも、彼女の真心を理解してヴィヴェットと結婚することを決意したのです。
ここまではいい話なのですが、2人の結婚式の夜、アルルの女が牧童頭のミティフィオと駆け落ちすることを知ると、フレデリは嫉妬に狂って自らの命を絶ったという物語です。嫉妬心というのは今も昔も人を狂わせるのでやっかいです。
ゴッホが描いたプロヴァンス
アルルの町の中心は、ゴッホの「夜のカフェテラス」をはじめ、たくさんのカフェが並ぶフォーロム広場です。「アルルの女」は想い出だけにとどめて、ここでのんびりと夕暮れまでのひとときを過ごすと「カフェ・バン・ゴッホ」CAFÉ VAN GOGHの黄色い壁が浮かび上がり、ゴッホが描いた光あふれる世界を感じることができます。
その昔、プロヴァンスでは赤ん坊が生まれると
「パンのように善良で、卵のように満たされ、塩のように控えめで、そしてマッチのようにまっすぐで元気な子に育ちますように」
とパン、塩、卵、マッチを贈られたそうですが、カフェの周りにいるアルルっ子達はその4つの贈り物のお陰か、皆元気に育っているように思えます。
祝!日本の縄文文化「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産登録
「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されたことを記念して、私はみちのくを旅した芭蕉の研究本『松尾芭蕉の旅に学ぶ』と共に『縄文人からのメッセージ』というタイトルで縄文文化を語り、平成芭蕉の『令和の旅指南』シリーズ(Kindle電子本)として出版しました。人生100歳時代を楽しく旅するために縄文人の精神世界に触れていただければ幸いです。
また、日本人の心に灯をつける『日本遺産の教科書』、長生きして人生を楽しむための指南書『人生は旅行が9割』、感情の老化を防ぐ私の旅日記である『生まれ変わりの一人旅』とともにご一読下さい。
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
世界遺産とは地球の成り立ちと人類の歴史によって生み出された全人類が共有すべき宝物で、その内容によって①文化遺産②自然遺産③複合遺産に分類されます。この「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。