朝鮮通信使と新羅王国の古都「慶州」
瀬戸内海航路と朝鮮通信使
周囲を海に囲まれた日本では、古来より、海は「海道」として、時によっては陸の「街道」以上に重要な道でした。
特に瀬戸内海は日本の大動脈であり、多くの風待ち・潮待ちの港町が栄え、その中でも戸田(鞆の浦)、広田(牛窓)、柏山(室津)等の港町を結ぶ瀬戸内海航路は遣新羅使や朝鮮通信使が利用した道でもあります。
朝鮮通信使は室町時代に将軍からの使者と国書に対する返礼として始まったもので、「信(よしみ)を通(かよ)わす使者」として朝鮮国王が国書や進物をもたらすために派遣した外交使節団のことを言います。
この朝鮮通信使は豊臣秀吉の朝鮮出兵(文禄・慶長の役)による国交断絶のために一度は中断されましたが、徳川幕府によって1607年に再開され、約200年の間に計12回、日本を訪れています。
江戸幕府の外交政策では中国(明や清)、オランダ(紅毛)は通商(貿商)国、沖縄の琉球王国と朝鮮は正式な国交のある通信国とされていたのです。しかし、朝鮮通信使の実態は活字では正しく伝えられていないように感じます。
私は伊賀忍者発祥の地、三重県名張(隠)市黒田荘の「黒田の悪党」が先祖で、「大切なことはメモではなく口伝で伝える」と教育されているため、一般に書かれた歴史は勝者の歴史であり、真実の歴史は伝承文学にあると理解しています。
よって、日本の古代文化を知るには『万葉集』が好ましいのと同様、朝鮮通信使については『日東荘遊歌』という日本道中記、朝鮮については『日本奥地紀行』の著者であり、イギリス人の女性探検作家として知られるイザベラ・バードの『朝鮮紀行』が真実を語っているように感じます。
新羅王国千年の都 慶州と日本の古都 奈良
そこで今回は朝鮮半島における文化の発祥地、慶州(キョンジュ)をご紹介します。
奈良は民俗学者柳田國男の兄であった松岡静雄氏によれば、朝鮮語の国を意味する「ナーラ」が語源とも言われていますが、私にとって新羅(シルラ)王国の都であった慶州は、日本の奈良を連想させます。
実際、慶州で必ず訪れる世界遺産の仏国寺の伽藍配置は日本の奈良時代の寺院配置に似ています。
なかでも印象に残るのは東の多宝塔と西の釈迦塔ですが、これは女性の美と男性の美を競っているように大雄殿の前庭の左右に対峙して立っています。
創建時の伽藍はほとんど失われていますが、この2つの建造物は永遠の美として今日に残っています。
多くの遺跡があって、「屋根のない博物館」と呼ばれる慶州は、世界でも指折りの古都でローマ、イスタンブール(コンスタンティノープル)、バグダッド、西安(長安)などの世界的な都に引けをとらない新羅王国、千年の都でした。
一つの王朝が千年近く続いたという事実も驚きですが、その間、都が一度も移らなかったと言う点は特筆すべきでしょう。
それはとりもなおさず慶州が韓国精神文化の永遠の故郷であり、新羅から始まった韓国文化の発祥地であったことを意味します。
現在、その韓国文化発祥の地である慶州歴史地域は、遺跡の種類によって南山、月城、山城、皇龍寺跡、大陵苑の5つのエリアに分けられています。
中でも月城地区にある7世紀に建立された東洋最古の天文台の瞻星台(チョムソンデ)や古墳から出土した美術品を展示した「国立慶州博物館」、新羅王をはじめとした古墳群が密集する大陵苑は必見です。
現在、韓国語はハングルという表音文字を使っていますが、この慶州を訪れると昔ながらの新羅語を語源とするものが多いことに気がつきます。
私は、もし今日の韓国人に表意文字である新羅語を使う習慣が残っておれば、同じ表意文字の漢字を使う我々日本人とより一層の信(まこと)を通わすことができたのではないかと感じます。
現在の若い韓国人がハングルだけでなく、表意文字の漢字が読める状態になれば、日韓関係も改善されるのではないでしょうか。
祝!日本の縄文文化「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産登録
「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されたことを記念して、私はみちのくを旅した芭蕉の研究本『松尾芭蕉の旅に学ぶ』と共に『縄文人からのメッセージ』というタイトルで縄文文化を語り、平成芭蕉の『令和の旅指南』シリーズ(Kindle電子本)として出版しました。人生100歳時代を楽しく旅するために縄文人の精神世界に触れていただければ幸いです。
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
世界遺産とは地球の成り立ちと人類の歴史によって生み出された全人類が共有すべき宝物で、その内容によって①文化遺産②自然遺産③複合遺産に分類されます。この「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。