世界三大宗教の聖地 イスラエルのエルサレム
ユダヤ人は唯一神ヤハウェと最初に契約した人をアブラハムとし、アブラハムがその息子を捧げようとした地を「神が準備したサラム(イルエ・サラム)」と呼んだことからその土地を「エルサレム」と命名したと言われています。
そして紀元前1000年ころ、ダヴィデが現れて12部族に分かれていたユダヤ人を統一してパレスティナ一帯に王国をつくり、その首都をエルサレムに定めました。そしてダヴィデの後を継いだソロモンは「十戒」を納めた神殿をモリヤの丘に建て、エルサレムは政治的にも宗教的にもユダヤ人の中心都市となったのです。
しかし、紀元前63年にはローマ帝国に支配され、後にローマ軍によって市街と神殿が破壊されたため、ユダヤ人は世界各地に離散(ディアスポラ)しました。
一方、エルサレムはイエス・キリストが十字架に処せられた地であり、イスラム教の開祖ムハンマドが神の啓示を受けて天界に旅立った場所でもあるので、キリスト教とイスラム教にとっても聖地となりました。
歴史の好きな方は、ユダヤ教だけでなく、キリスト教、イスラム教の聖地でもあるエルサレムを訪ねましょう。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三大聖地「エルサレム」
エルサレムの旧市街とその城壁
アメリカは1984年のレーガン元大統領の任期中に「ソ連の利益を擁護している」との理由でユネスコを脱退し、2003年には再び加盟していましたが、2018年末にアメリカとイスラエルは国連教育科学文化機関(ユネスコ)から脱退しました。
これはユネスコがヨルダン川西岸にあるパレスティナ自治区の「ヘブロン旧市街」をユダヤ教徒との関わりを考慮せず、パレスティナの世界遺産に認定したことに対する反発で、国連ユネスコの反イスラエル的姿勢への非難と考えられます。
実際、イスラエルはエルサレムを首都と主張していますが、これは国連安保理決議で無効とされており、世界遺産「エルサレムの旧市街とその城壁群」も「ヨルダンによる申請」という変則的な手続によって登録されています。
そこで今回は数ある世界遺産の中で唯一、当事国が存在せず、また歴史的に宗教間で領有権が争われてきたことから、最も長い期間危機遺産となっているエルサレムについてご紹介します。
ユダヤ民族の歴史と三大宗教の聖地
エルサレムはダヴィデ王によって紀元前11世紀頃に建国された、ユダヤ人による古代イスラエル王国の都でした。しかし、彼らユダヤ人は紀元前5世紀にこの地を追われ、その後は国を持たずに世界を放浪、1948年のイスラエル建国まで諜報機関を充実させ、教育を重視し、金融を生業としながら独自の努力をしてきました。
現在のエルサレムは西と東に分けられますが、世界遺産登録されているのは東エルサレムの旧市街で、ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒そしてアルメニア人の4つの地区からなります。旧市街はオスマン帝国時代に築かれた約1km四方の城壁に囲まれており、歴史的、宗教的に重要な意味をもつ建造物が多く残っています。
特に重要なのはユダヤ人にとって魂の故郷とも言える「嘆きの壁」、イエスキリストが磔の刑に処せられるまでに歩いた悲しみの道「ビアドロローサ」とキリスト処刑と埋葬・復活の地に建つ「聖墳墓教会」、そしてイスラム教を創始したムハンマドがアッラーの啓示を受けて昇天した伝説の「岩のドーム」と呼ばれる三大宗教の聖地です。
エルサレムと言うと宗教対立やテロを連想し、危険なイメージがありますが、実際に訪れてみるとユダヤ教、キリスト教、イスラム教をあわせた約35億人の信者が「聖地」とするだけに、この地では多くの人種・民族がある時は厳粛に、またある時は活気に満ちて生活を営んでいます。
世界中を旅した私も、この地を歩いた時は、アメリカ、アジア、中近東、アフリカ、ヨーロッパと世界中を旅行している気分でした。
エルサレムとパレスティナの世界遺産「ヘブロン/アル・ハリル旧市街」
また、世界の生きた歴史を直に学ぶこともできる不思議な街で、その意味からこのエルサレムはイスラエルだけでなく、真に人類が共有し、守るべき遺産です。しかし、パレスティナとイスラエルによる領有問題や巡礼者による観光被害などのために、1982年以降、危機遺産リストに記載されたままの状態です。
2017年に緊急的登録推薦という例外的措置でパレスティナの世界遺産登録された、エルサレムの南に位置するヘブロン/アル・ハリル旧市街も同様に三大宗教の聖地です。
こちらはユダヤ教、イスラム教、キリスト教を信仰する「啓典の民」の始祖アブラハムの墓があることで聖地とされました。この旧市街の建物は老朽化しており、修復が必要なのですが、現在はイスラエルが禁止しているために増改築ができません。
しかし、世界遺産に登録された以上は、ユネスコを脱退したアメリカやイスラエルの意向はさておき、一刻も早く人類共通の遺産として守っていくべきだと思います。
祝!日本の縄文文化「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産登録
「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されたことを記念して、私はみちのくを旅した芭蕉の研究本『松尾芭蕉の旅に学ぶ』と共に『縄文人からのメッセージ』というタイトルで縄文文化を語り、平成芭蕉の『令和の旅指南』シリーズ(Kindle電子本)として出版しました。人生100歳時代を楽しく旅するために縄文人の精神世界に触れていただければ幸いです。
また、日本人の心に灯をつける『日本遺産の教科書』、長生きして人生を楽しむための指南書『人生は旅行が9割』、感情の老化を防ぐ私の旅日記である『生まれ変わりの一人旅』とともにご一読下さい。
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③『松尾芭蕉の旅に学ぶ 令和の旅指南Ⅲ』:芭蕉に学ぶテーマ旅 「奥の深い細道」の旅
④『生まれ変わりの一人旅 令和の旅指南Ⅳ』: 感動を味わう一人旅のススメ
⑤『日本遺産の教科書 令和の旅指南』: 日本人の心に灯をつける 日本遺産ストーリーの旅
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
世界遺産とは地球の成り立ちと人類の歴史によって生み出された全人類が共有すべき宝物で、その内容によって①文化遺産②自然遺産③複合遺産に分類されます。この「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。