日本で人気の世界遺産 安芸の宮島「厳島神社」
安芸の宮島は江戸時代末までは神仏混合で、厳島神社、大聖院、大願寺は「三社体制」をとっていました。すなわち、大聖院が社僧を管理し、大願寺が神仏の修造を担当していました。
弁財天を祀る大願寺は厳島神社の社殿前にあり、弘法大師空海が開基した大聖院は標高535mの霊峰弥山(みせん)の麓にあります。
宮島を訪ねる際には厳島神社だけでなく、大願寺、大聖院の参拝もおすすめします。また同じ世界遺産に指定されている弥山も訪ね、山頂に登ると天気によっては遠く四国連山まで望めます。
平清盛が信仰した「厳島神社」は日本三景から世界遺産へ
世界遺産「厳島神社」は日本三景・安芸の宮島のシンボル
「せとうちDMO(Destination Management Organization)」は、2020年の東京オリンピックに向けて瀬戸内の魅力を国内外に発信していますが、今でいうこの瀬戸内の地域おこしと世界に向けて貿易ルート開発事業を最初に行ったのは平清盛です。
中国(宋)との交易による経済発展を構想していた清盛は、瀬戸内の安全を第一と考え、瀬戸内の海賊を退治して制海権を握った後、海上安全を守護する「厳島大神」を熱く信仰し、瀬戸内航海の無事を祈念しつつ日宋貿易を行ったと考えられます。
「厳島大神」を祀る厳島神社は、日本三景のひとつ「安芸の宮島」のシンボルでもあり、潮の干満によって趣をかえるその幻想的な姿は外国人にも人気があります。
厳島の名前は「斎(いつ)く」という心身を清めて神に仕えるという言葉に由来し、島全体が聖地として太古より崇められてきました。
そして厳島の神を崇めるために社殿を一新した平清盛ですが、寝殿造りを基本とした社殿を海上に建てたのは清盛独自のユニークな発想で、自然美と人工美が調和した他に類を見ない夢幻的な社殿群です。神殿造りはそれまでの神社建築には見られなかったもので、独立した各部屋を渡り廊下でつなぐ点に特徴があり、厳島神社でも本社と能舞台は西回廊でつながっており、本社と客(もろうど)神社は東回廊でつながっています。
また、本社本殿と客神社本殿には、両流造りという建築様式が用いられており、切妻屋根の平側入り口屋根を伸ばした「向拝(こうはい)」を背面にも設けています。
厳島の3女神と5月15日の伝統行事「御島巡式」
厳島の神とは「宗像三女神」と総称される、市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)、田心姫命(たごりひめのみこと)、湍津姫命(たぎつひめのみこと)の三柱です。
そして、厳島神社は明治以前の神仏習合の時代は隣接する大願寺と一体で、市杵島姫命は仏教の女神の弁才天と習合したため、大願寺は「日本三大弁才天」の1つとされています。
そこで、厳島神社にはこの3女神が鎮座の場所を探して浦々を巡ったという伝説にちなんで「御島巡式(おしまめぐりしき)」という珍しい伝統行事が毎年5月15日に行われています。
その中でも重要な養父崎神社の沖合で行われる御鳥喰式(おとぐいしき)は、海上に幣串と団子を供え、雅楽を奏すると雌雄2羽の神鴉(おがらす)が団子をくわえて養父崎神社に帰っていくというとても神秘的で、私、平成芭蕉のおすすめ行事です。
厳島神社は平家の象徴で不朽の信仰芸術
一方、厳島神社の社殿は「玉御池(たまのみいけ)」と呼ばれる入江の中に建てられており、陸からの「回廊」は通路としてだけでなく、僧の読経や舞楽の演奏の場、またあるときは観覧席としても利用されていました。
そして、この回廊の床板には隙間があり、高潮の際には隙間から水が抜けて建物が浸水しない工夫がなされています。しかし、台風や高潮で本殿が床上浸水することもたびたびあったのですが、御神体を祀る玉殿(ぎょくでん)は本殿内の檀上にあって、回廊から1m50㎝ばかり高いために、歴史上、一度も浸水していません。
干潮時には社殿から150m沖の大鳥居まで干上がりますが、満潮時にはまるで海上の宮殿にいるような壮大さから、平安貴族はこの厳島神社を「竜宮」と呼びました。宮島のシンボルである会場の大鳥居は、4本の控え柱で支える両部鳥居で、海底に延びる柱の根元は固定されておらず、自重で立っています。
清盛がこの厳島神社を壮大なものにした理由は、厳島神社を平氏の氏神とし、平家の威勢示す目的があったと思われます。
栄華を誇った平家でしたが、清盛の死後、滅んでしまいます。しかし、平家の象徴となった厳島神社の権威は今も揺るがず、瀬戸内の観光事業にも貢献しています。
世界遺産の厳島神社は、平清盛という英雄が残した不朽の信仰芸術であり、交易立国としての「日本の魂」とも言えるでしょう。
祝!日本の縄文文化「北海道と北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産登録
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
世界遺産とは地球の成り立ちと人類の歴史によって生み出された全人類が共有すべき宝物で、その内容によって①文化遺産②自然遺産③複合遺産に分類されます。この「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。