『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』のロケ地、ヨルダンの世界遺産「ペトラ遺跡」
私は007シリーズをはじめとする映画のロケ地を巡る旅にしばしば同行しましたが、中でも『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』のロケ地となったペトラ遺跡は、私が最も感銘を受けた場所の一つです。
特に水の浸食によってできた高さ80mの絶壁が聳える「シーク(峡谷)」と呼ばれる巨大な岩の裂け目にできた細道を抜け、映画で聖杯の安置場所とされていた「エル・カズネ」が細長い裂け目の間に見えた時には、ハリソン・フォード演じる考古学者インディアナ・ジョーンズのごとく、宝物を探して冒険している気分でワクワクしました。
映画の中の非現実が現実のものとして自分の目の前に現れるスペクタクルは、一生に一度は体験すべきかと思います。
このシークには「訪れる人を魂の内部に導く」という宗教的な意味があり、両側の壁には運河の跡とともに祈祷用の碑や彫刻、霊石なども残っていて、岩肌も陽の当たる角度によって刻々と色が変わるので、シークは細い通路というより、幻想的な参道でした。
ペトラ遺跡は中東のヨルダンにある世界遺産で、ペトラとは、ギリシャ語で『崖』を意味しており、2000年以上も前に、この地に定住したアラブ人の一族ナバテア人が切り立つ岩壁を削って造った隊商都市遺跡です。
この地は東西の古代文明を結ぶ要衝の地で、キャラバンの貿易中継地として栄え、その交易で得た富で様々な建物が造られたのです。赤褐色の巨大な岩を彫り抜いて造られた「エル・カズネ」も、一見すると古代ギリシャ・ローマ風の神殿ですが、どこかエキゾチックな東方文化とヘレニズム的要素が感じられます。
「エル・カズネ」は地元では、エジプトのファラオの宝物が隠されていると信じられていたため、「カズネ・ファルウン(ファラオの宝物庫)」と呼ばれていましたが、実際は内部に何も残っていないため、神殿として使われたのか、王の墓だったのか分かっていません。
ナバテア王国は紀元前9年から紀元後39年にかけてのアレタス4世の時代に最盛期を迎え、エル・カズネやカスル・アル・ビントといった岩窟墓などは彼の時代に造られたと言われています。
その後、106年にペトラがトラヤヌス帝によってローマに併合されたことにより、ナバテア王国は幕を閉じました。そしてローマの支配を受けるようになってからは、円形競技場や浴場などが建設され、ローマ風の街並みへと変化し、ナバテア文化時代の遺跡は減り始め、栄華を極めた頃の姿も見られなくなりました。
しかし、今日のペトラ遺跡にはナバテア人独特の階段模様をもつ墳墓群や犠牲祭壇、ローマ時代に造られた劇場、そして山の上に神々しい修道院「エドディル」もあって興味はつきません。
「エドディル」は、「エル・カズネ」より一回り大きく、ペトラがローマ帝国に併合された後、キリスト教の修道士が住んでいたことから「修道院」と命名されましたが、今では神殿(葬祭殿)だったことが分かっています。
神殿の遺跡からは香を焚く台が発見されており、ナバテア人は宗教儀式として香木を焚いて太陽を祀っていたことがストラボンの『地理誌』にも記されていることから、ナバテア王国の宗教儀式では香木が使われていたと考えられています。
ペトラ遺跡最大の建造物「エドディル」の迫力に加え、約800段の急な石の階段を上る途上で、ふと後ろを振り返れば、時の流れを忘れさせる世界にはっと息をのむ瞬間があります。「死ぬまでに行きたい世界の絶景」では、必ず名前があがるペトラ遺跡ですが、私は特に冒険心を忘れつつある人に訪れていただきたい場所だと思います。
なぜなら、ペトラ遺跡は、訪れる人のなかに潜む冒険心を焚きつける、古代人の技力が結集した唯一無二のテーマパークだからです。
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。