イタリアの世界遺産ポンペイと日本のポンペイ「鎌原村」
1787年にポンペイを訪れた文豪ゲーテは「世界にはこれまでいろいろの災禍が起こったが、後世の人々をこれほど愉快にするものは余り他に類がないだろう。こんな興味深いものはそう沢山はない」と『イタリア紀行』に記しています。
すなわち、ポンペイは現代人が古代ローマの生活に触れることのできる最高の遺跡です。また、火山の噴火による災害地という立場からは「日本のポンペイ」とも呼べる嬬恋の鎌原村もおすすめです。
ヴェスヴィオの火山灰が保存「ポンペイ」と古代ローマの暮らし
日本のポンペイ「鎌原村」とヴェスヴィオ火山で埋もれた「ポンペイ」
昨年、草津白根火山の噴火がニュースになりましたが、群馬県嬬恋村の鎌原(かんばら)地区(旧鎌原村)は1783(天明3)年7月8日に起きた浅間山大噴火の火砕流で一村152戸が飲み込まれ、多くの犠牲者を出しました。
私はその火砕流から人命を救った鎌原観音堂と鎌原地区にある嬬恋郷土資料館を見学してきましたが、館内に展示されている噴火当時の絵図や出土品を見るとまるでイタリアのポンペイです。
ポンペイは紀元79年8月24日、イタリア南部のヴェスヴィオ火山が噴火し、保養地であったエルコラーノ地区と共に溶岩と火山灰に埋もれた町です。
エルコラーノは溶岩流に埋め尽くされましたが、ポンペイの場合、噴火で堆積したのは主として軽石と火山灰であったために町がそっくりそのまま埋もれ、まるで昨日まで人が住んでいたかのようにほとんど何もかもが今日まで残りました。
ポンペイ、エルコラーノ遺跡から知る古代ローマ文明
発掘跡からは噴火当時の建造物やかつての生活をしのばせる品々が発見され、古代ローマ時代の日常生活を明らかにする貴重な資料として脚光を浴びています。
ポンペイの遺跡の中には逃げ遅れてしまった人の遺体や遺品などの悲劇的なものだけでなく、家の前に書かれた「猛犬注意」の看板や「選挙で私に投票して下さい」と書かれた壁の落書きなどのユニークな遺跡も残っています。しかし、私にとっては逃げ遅れた人が埋まってできた空洞に、石膏を流し込んで再現された人々の悲劇の瞬間が印象的でした。
そしてポンペイの街を歩けば、庭付きの豪邸や大浴場、サウナ、居酒屋などが立ち並んでおり、2000年前の暮らしぶりに親近感を覚えると同時に古代ローマの文明がいかに進んでいたかに驚かされます。
日本では青銅器と竪穴式住居の弥生時代であり、その頃の遺跡と考えれば古代ローマの偉大さが理解できます。特に遺跡の東にある円形競技場は、街中が混雑しないようにあえて街はずれに建設された、約2万人収容できる世界最古の闘技場です。この保存状態と壮大さには、すべての道はローマのコロッセオではなく、このポンペイに通じていたかのように感じられました。
噴火で時を止めた「ポンペイ」と甦った日本のポンペイ「鎌原村」
1787年にポンペイを訪れた文豪ゲーテも「世界にはこれまでいろいろの災禍が起こったが、後世の人々をこれほど愉快にするものは余り他に類がないだろう。こんな興味深いものはそう沢山はない」と『イタリア紀行』に記しています。
当時のポンペイはナポリ湾に臨む良港で商業や海上貿易で繁栄を謳歌しており、「ダリウスとアレキサンダー大王の戦い」のモザイクで有名な牧神の家(カーサ・デル・ファウノ)や神話をテーマに描かれたフレスコ画の残るヴェッテイの家(カーサ・ディ・ヴェッティ)はともにポンペイの裕福な貴族の豪邸でした。
発掘された死体の中には金銀宝石類を抱え込んでいた人が多数いましたが、噴火が始まってとる物もとりあえず避難した人は多く助かったと言われています。しかし、ポンペイもエルコラーノも共に噴火により時を止めてしまいました。
一方、鎌原村では生き残った人々がその場所で再び生活を始めているのが感動的です。火山噴火によって埋まったという点では同じですが、大災害に見舞われた場所で再び生きる決意をした人々の事を考えると鎌原地区はポンペイ以上に価値ある遺産だと思います。
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私は平成芭蕉、自分の足で自分の五感を使って世界遺産を旅しています
世界遺産とは地球の成り立ちと人類の歴史によって生み出された全人類が共有すべき宝物で、その内容によって①文化遺産②自然遺産③複合遺産に分類されます。この「平成芭蕉の世界遺産」はその世界遺産についての単なる解説ではなく、私が実際に現地に赴いてその土地に生きる人たちと交流した際に感じた感動の記録です。